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名前:羽黒 鬼百合(はぐろ おにゆり) 名跡は『赤輝血(あかがち)』。鬼百合は本名だが姓の本来の綴りは『刃畔』。 よって全名は『刃畔 赤輝血 鬼百合(はぐろあかがちのおにゆり)』。 神力:『潯眼』(しんがん) 全ての物質に存在する『ほころび』を、視覚情報として捕らえる。 『ほころび』とはすなわち物体に存在する『死線』そのものであり、ここを正確に攻撃すれば、それは確実な一撃必殺となる。 潯眼発動時、その瞳は紅に染まる。 本来この能力は『神眼』であり、現実の視界によってある程度その性能が落ちるが、鬼百合は修行と鍛錬によってこれを完成させた。 現在は視界を有したままでもほぼ完璧に『ほころび』を見切ることができる。 ちなみに『潯』とは「水を湛えた底知れぬ淵」の意。 種族:稲荷 性別:♀ 年齢:??? 中の人:イザングラン◆JAgRVpOyBc 一人称:私 二人称:貴様 三人称:奴 口調:無口でぶっきらぼう 口癖:「黙れ」 好きなもの:刃物で斬られて血が噴出す一瞬前の肉の断面 嫌いなもの:人や物の多い場所 容姿1: 黒い着物に紅い襦袢と帯、黒い袴姿。 履物は編み上げのブーツを履き、長い黒髪を頭の上で結んでいる。 左腕は二の腕から無い。 装備: 神器:狐刀『真打陸奥丸』(ことう しんうちむつまる) 『刀』型神器。鬼百合が装備した場合、和製のナイフのような形状になる。 能力は液体の操作。鬼百合が「液体」と認識しているものを、物理法則を無視して操る事ができる。 柳が持つ影打陸奥丸の真打であり、鬼百合は稲荷を抜ける時にこれを奪い盗み出した。 使用技: 『羽黒神源流抜刀術・“改”』 抜刀術と居合にその技術の殆どを置いた、稲荷に伝わる剣術の一流派。 その発祥は羽黒の血統にあるべくして、あくまでも暗殺剣。 刀を抜き、斬るまでの時間を極限まで短縮するという思想が根底にある。 納刀状態から瞬間的に最高速度に到達するその剣先は、気配を立って得物に近付き一撃で仕留める獣の狩りを思わせる。 鬼百合はこの抜刀術を自己流に改良し、片手の抜刀状態から連続で神速の斬撃を繰り出すまでに昇華した。 ◆神器第一開放 液体、特に水の操作。 しかし、使用者が「液体である」と認識しているものであれば何でも操れる。 鬼百合はこれをしばしば左腕代わりに使う。 ◆神器第二開放 開放のための“見得”は『殺(ころ)せ』。 刀身から指向性を備えた特殊な音波を発し、刃そのものの切れ味の上昇、また遠距離に斬撃を飛ばす。 しかしこの能力は攻撃する場所の正確さが失われるため、正確すぎる鬼百合の『潯眼』との相性はあまり良くない。 戦術: 潯眼の能力とその神速の居合いで、射程距離内に入った相手を瞬間的に殺す事ができる。 超人的な反射神経や予知能力が無ければ、受けるのは至難の業。 しかし同様に『死線』を見切れる『神眼』を持った者との戦いにおいては、相手にこちらの狙いを読まれるために戦い辛い。 職業:抜け稲荷。 花札:『柳の屑』、或いは『柳に鬼』 柳は唯一、屑札がこの一枚しかない。 他の屑札にはそれぞれの植物が単体で描かれることが多いが、この柳の屑だけは柳そのものが描かれない。 赤と黒で描かれた図案は、多くが“雷雨の中で太鼓を拾う鬼の腕”である。 そのためこの札は別名『柳に鬼』、或いは『鬼札』と呼ばれる。 地方によってはこの鬼札に“全ての札を取れる札”という効果を持たせるルールも存在し、文字通り他の手を殺す鬼の札である。 鬼百合 真っ赤な花を燃やすように咲くので、その激しさゆえに鬼の名が冠せられた。 黒い斑点があるせいか、その香りをかぐと、そばかすができるともいわれた。 また、ヨーロッパではこの斑点が醜いと見られた。 代表的な花言葉は「嫌悪」「侮蔑」「純潔」「飾らぬ美」「荘厳」「軽率」。 設定 羽黒 柳の実姉。 過去に羽黒家当主の座を求め、それを柳に奪われた過去がある。 しかし、これには羽黒の掟が深く関わって来る。 詳しくは『過去』参照。 戦う際にはただ只管に斬りかかるが、真に恐ろしいのはその瞬間的に振り切れる殺意。 全く初対面の相手であろうと、殺す必要があれば生まれた時から怨んでいたかのような強大な殺意を“意図的に”持つことができる。 この殺意はある種の才能だとも言えるが、逆にこの殺意は鬼百合自身を殺人の衝動に突き動かすものでもある。 度々、ふらりと夜の街に出ては返り血を浴びて戻ってくるが、どこで何を斬っているのかは不明。 過去 柳はずっと知らないものだと思っていたのだが、実は鬼百合もまた、羽黒家の当主が眼を潰すという掟を知って居た。が、同時に、ひとたび当主になればその権力と引き換えに、羽黒の血筋に永遠に縛られ続け、その手に血を浴びなければならないということも、『完全なる神眼』を持って生まれた柳がこのままでは否応無く当主となる事も知っていた。そのため鬼百合は柳にそんな仕来りを背負わせまいとし、柳よりも強いことを証明して自分が当主となるつもりであった。 そして次期当主を決定するための御前試合、あらかじめ鬼百合は柳を呼び出して話しを通し、自分を勝たせるように柳に言う。そして鬼百合はその予定通りに柳に一太刀を見舞った。 が、柳はそれを避け、逆に鬼百合を打ちのめしてしまった。 柳は羽黒の当主が眼を潰し、光を奪われるという事を知っていた。しかし、この事を鬼百合が知っているという事は知らなかったのだった。同時に、もしも面と向かってその事を伝えても、姉は決して当主の席を譲らないまま自分の眼を潰すだろうという事は、妹として痛いほどに解っていた。 柳は鬼百合が光を失わないようにという愛情で鬼百合を倒し、そしてまた鬼百合も、羽黒の血筋に柳が縛られないようにという思いから当主の座を奪おうとしていた。 そんな姉妹の思惑は互いにすれ違ってしまい、結果的に、裏をかいた柳が羽黒家当主となることになった。 がその夜、鬼百合は刀を手に柳の寝込みを襲い、柳に斬りかかる。しかし殺すつもりは無く、ただ柳が二度と剣を取れないようにしようとしただけであった。剣が振れなければ当主にはなれない。鬼百合はそんな歪んだ愛情から、柳を斬ろうとした。 だが、柳は鬼百合が思う以上の存在であり、そして羽黒の当主に相応しき決断の速さとある種の残酷さを持ち合わせていた。 斬りかかった鬼百合の一閃は寸前でかわされ、逆に振り切った鬼百合の左腕は、柳の枕元の短刀によって切り落とされてしまった。確かに鬼百合は柳に深手を負わせようとして斬りかかったが、しかし柳もまた、その攻撃に対してただ機械的に反応したわけではなかった。 「剣が振れなければ当主にならずに済む」。 柳もまた鬼百合と同じ、血を分けた姉妹を思う愛情から、鬼百合の腕を落としたのだった。 次期当主を殺そうとした鬼百合はすぐさま取り押さええられ、腕の治療を施された後、地下牢に幽閉され、柳と鬼百合は互いに会う事すら不可能となった。互いに互いの本心を伝えられぬままに、鬼百合はやがて柳を、自分の愛に気付かず当主という座に溺れたのだと思い込み始める。。 やがて鬼百合は遠くの分家へと引き取られることとなるが、その際に牢の扉が開いた瞬間を見計らって見張りの懐刀を奪い、見張りを刺して脱走。修羅の如き形相のままで蔵へ押し入り、当主の証である神器・『真打陸奥丸』を奪って姿を晦ませる。 以上が、稲荷側の把握している鬼百合の顛末である。 しかし稲荷から抜けた鬼百合はその後、陸奥丸と共に自ら命を絶とうとしている所を信楽一派の首領、信楽厳三郎綾御津に拾われ、それ以来信楽一派に身を置く。 が、厳三郎綾御津に協力しているというわけではなく、その理由はただ『此処に居れば殺せるから』である。 閉じ込められていた暗い牢獄の中で、鬼百合は「自分に柳を斃すだけの力さえあったならば」という思いを巡らせ続けていた。その思いは信楽一派に拾われた後にもじわじわと姿を変えながら鬼百合の心を蝕み続け、次第に「柳以上の強さ」を求める心は、「柳への殺意」へと変貌していった。 鬼百合の歪んだ愛憎は強烈で無差別な殺衝動として、未だに心の奥に、水底の泥の様に淀み凝っている。 .
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある乙女の小さな願い 1章 乙女の不安 御坂美琴と白井黒子は上条当麻の部屋の前にいた。 白井はその場にボーっと突っ立って何やら物思いにふけていたが 「お姉様、覚悟はよろしいですの?」 「いったい何の覚悟よ?」 「そうですわね、それでは呼び鈴を鳴らしますの」 (もし、上条さんの能力でも元に戻らなかったら・・・・・) 白井の胸には『もし』の不安が消えることは無かった。 ピンポーン 「ハイハーイ」 間抜け面をした上条が出てきた。 「白井か?珍しいな、どうしたんだ?」 「こんにちはですの、実はあなたにお願いがあって参りましたの」 「俺に?いったい何の用だ?」 「アンタの右手に用があってきたのよ」 「御坂の声?どこにいるんだ?」 突然聞こえてきた美琴の声に上条は驚きながら辺りを捜したが姿が見えない。 「ここよ!」 ようやく白井の肩に乗っている美琴を見つけたが・・・・・・ 「御坂の人形か?よく出来てるなー」 小さくなっている美琴を見て人形と勘違いした。 「人形じゃないわよ!」 「しゃべるのかこの人形!」 鈍感な上条はまだ気づかない。 「だから違うって言ってんでしょうがっ!!」 叫ぶと同時に上条に電撃を浴びせた、上条は条件反射で右手でガードをする。 「えええっ!?どうしたんだ御坂?何でそんなに小さくなってんだ!?」 ようやく人形が美琴と気づいたが、思いがけない出来事に叫んでしまった。 「んなこと、わかんないわよ!」 「・・・・・・・とりあえず家の中に入れよ」 冷静さを取り戻した上条は美琴と白井を自室に招き入れた。 「とうま、なんでいつも短髪といっしょにいる女を家に上げるのかな?」 部屋には居候のシスターがくつろいでいた。 何故か歯をガチガチと鳴らせて臨戦態勢をとっている。 「これにはちょっと事情があってだな」 上条は真剣な表情でインデックスを見た。 さすがに普段と違う表情をされたのでインデックスはそれ以上追求できなかった。 「白井黒子ですの、シスターさん」 「わたしはインデックスって言うんだよ、それで事情ってなんなのかな?」 「実は御坂がな・・・・・・・」 事情を説明するより実際に見てもらったほうが早いと思った上条は、美琴を呼び出した。 インデックスは白井の肩に乗っている美琴を見つけた。 「短髪?どうしてそんなに小さくなったの?」 当然の疑問だった、おそらく御坂美琴を知っている人間が今の彼女を見たときにする質問1位だろう。 白井黒子、上条当麻、そしてインデックス 彼女の姿を見た3人がまったく同じ質問をしたのだから。 「わかんないわよ!鏡を見ていたら急に小さくなって・・・・・・、何か能力者の仕業だとは思うんだけど・・・・・・」 「それでどんな能力も打ち消す俺の幻想殺しの出番ってわけか」 「そういうこと」 「上条さん、お願いしますわ」 任されたと上条はうなずくと右手で美琴を触る。 だが――― 美琴は自分の周囲と自分の体を確認するが、大きくなる様子はない。 元に戻らない、白井が一番恐れていたことが現実になった。 美琴の心にはどんどんと不安が広がっていく。 そして出た言葉は――― 「どういうことよ!アンタひょっとして手を抜いてるんじゃないでしょうね!」 「んなわけないだろ!」 「上条さんの能力?でも元に戻せないなんて・・・・・・これはいったいどういうことですの」 何が何だか分からない、白井も混乱している。 「どういうことってこっちが聞きたいわよ!」 「俺の幻想殺しが効かないってことは、能力や魔術の類じゃないと思うんだけど・・・・・・インデックス何か分からないか?」 「うーん、こういう魔術は知らないかも、さっき鏡って言ってたけどその鏡を見せてもらっていいかな?」 インデックスは冷静に状況を判断して、情報を集めようとした。 「これですの」 白井が鞄から取り出された鏡には布が巻かれていた。 「気をつけてくださいまし、鏡に姿を映すとお姉様のようになってしまうかもしれないので」 「魔力を感じるんだよ、何かの霊装とは思うんだけど」 「霊装ってなによ?」 普段聞きなれない言葉に突っかかった。 「魔術を使うための道具のことなんだよ」 魔術って・・・・・・と思ったがこれ以上は突っ込んでも話は先に進まないのでとりあえずスルーすることにした。 「インデックスその鏡について何か心当たりは無いか?」 「私の記憶の10万3000冊の魔道書の中にもこんな鏡はないんだよ」 インデックスの知識でもダメか・・・・・・・、自分の幻想殺しも効かなかったしどうすれば良いのか分からなかった。 「とうまの右手でこの鏡に触れば何か起きるかも」 「そうだな・・・・、インデックスちょっと貸してみろ」 インデックスが上条に鏡を渡そうとした時 『触らないで!』 「へ?インデックス何か言ったか?」 「私は何も言ってないんだよ」 「じゃ御坂か?」 「私も違うわよ」 「白井?」 「違いますの」 「じゃぁ誰なんだ?」 誰にも分からなかった、とりあえず全員が気のせいとして処理をようとして、上条が鏡に触れようとする。 『触らないでって言ってるでしょ!』 「えーっと、気のせいか・・・・・・鏡が喋ったように聞こえたが・・・・・・・」 「気のせいではございませんの、わたくしにもハッキリと聞こえましたわ」 どうやら鏡が喋ってるらしい、その場にいる全員が驚いている。 「いったい何なのよ、この鏡は」 「とうまに触られたく無いってことは、何かまずいことでもあるのかな?」 『・・・・・・』 返事はない、どうやら本当にまずいみたいだ。 「よし、それじゃ触ってみるか」 『まずいのは私だけじゃないわ、貴方の右手で私に触れれば私は消えて無くなる。でもその場合はそちらのお嬢さんも永遠に小さいままよ?』 何も知らず上条が右手で触れていたと思うと、誰もが息を呑んだ。 鏡の言葉を冷静に聞いたのは白井だった。 「その言い方ですと元に戻る方法は他にあるということですのね?」 『知らないわ』 鏡は冷たく言い放った。 「どういうことよ!」 美琴はムッとした表情で鏡を問い詰めた。 「落ち着けって御坂」 「こんな姿にされてどう落ち着けってのよ!」 バチバチと帯電しながら本気で怒り出している。 確かに落ち着いていられる状況じゃない、だがこのままでは話は進まない。 上条は右手で美琴のことを優しく包み込んだ。 「・・・・・・・落ち着いたから放してよ」 美琴は恥ずかしそうに言うと上条はすぐに手を放した。 「喋る霊装ってはじめて見るかも」 どうやらインデックスの10万3000冊の魔道書の中にも喋る霊装というのは無いらしい。 「言葉が通じるのは幸いですの、鏡さんどうすればお姉様は元に戻るのです?」 魔術のことを知らない白井は鏡のことを知ろうとしている。 『言ってる意味がわからないわ』 「だからお姉様を元に戻しなさいと言ってるんですの」 白井は怒りをこめて睨みつける。 『・・・・・・・・・・・』 返事が無い、どうやら鏡は自分に都合の悪いことは答えないようだ。 「黒子もういいわ・・・・」 「お姉様?」 「御坂?」 「短髪?」 「もういいわ、私がこの鏡と話す」 「ですがお姉様」 先ほどの美琴の怒りのこともあり少し心配になったが、美琴の顔にはさっきまでの怒りの表情は消えていた。 「わかりましたの」 「私と鏡をどこか二人きりで話せるところに連れてって」 「御坂、大丈夫か?」 当然上条も心配している、自分の幻想殺しで美琴を元に戻せなかった責任も感じているのだろう。 「大丈夫?って言われても、私が元に戻る方法を知ってるのはこの鏡だけなんだから」 「それもそうだが・・・・・・」 「とうまの部屋は狭いから二人っきりで話すことは難しいかも」 「事実だけど狭いのは余計だ!とりあえず風呂場ならここには会話は聞こえないと思うけど・・・・・・」 「それではお風呂場へ連れて行きますの」 白井は美琴と鏡をお風呂場に連れて行った。 『案外落ち着いてるのね』 「何がよ?」 『別に?普通は暴れたり、誰かのせいにしたり、絶望したりするもんじゃないかなって思って』 「今まであんたが小さくしてきた人はみんなそういう反応だったんだ」 『・・・・・』 鏡は答えなかった。 「それで、どうすれば私は元に戻れるのかしら?」 すると鏡は突然こう言った。 『貴方あの男のことが好きなんでしょ?』 「べべべ別にだだだ誰がアイツのことなんてっ!」 美琴は真っ赤になって否定したが――― 『素直になってアイツに告白』 「なななな、なんでそのことを!」 たった一瞬、上条に対する美琴の態度を見ただけでアイツというのが上条だと気づかれた。 美琴が恥ずかしさで顔を真っ赤にしていると、鏡は低い声で言った。 『二度と元に戻れないって言ったらどうする?』 突然の言葉にバチバチッと美琴周りに電気が発生する。 それまで真っ赤だった美琴の表情が一気に変わる。 「本気で言ってんの?」 『まぁ、どうしても元に戻りたいっていうなら教えてあげてもいいけど』 「そりゃ戻りたいに決まってるでしょ!」 『ただ元に戻る方法を知ったら後悔することになるわよ、死にたいと思うかも』 「もったいぶらないでさっさと教えなさいよ」 『彼に嫌われなさい』 「え?」 『好きな人から嫌われる、気の毒だけどそれが元に戻る条件よ』 美琴は何を言われたのか分からなかった。ただその言葉には絶望しかなかった・・・・ 「アイツに嫌われろですって?」 『そう言ったつもりだけど?』 「そんなこと・・・・出来るはずが無い・・・・」 『だったら永遠にそのままでいることね、あの男それなりに優しそうだしずっと守ってくれるんじゃない?』 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある乙女の小さな願い
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「ぶっちゃけ最近暑くてたまんねぇ。もう夏真っ盛りって感じだな」 「そうっすね。さすがに支部内は冷房が入ってますからマシですけど」 ここは、昼間の風輪学園第159支部。ここに所属する風紀委員の面々は、比較的高レベルの能力者が揃っている。 「そりゃあもう夏なんだし、当たり前じゃない」 「それだけならまだ耐えられるんだが、最近はぶっちゃけストレス溜まりまくりだからなあ」 「ストレス?あなたが?」 「そうだよ。学内で騒動が起きるわ、破輩先輩から蹴りを喰らうわ、おまけにリンちゃんに首を絞められるわで散々だっつーの」 「あ、あれはあなたが悪いんでしょうが!!このエロ鉄枷!!」 「ブッ!!ば、馬鹿言ってんじゃねぇ。だれがお前のカラダなんかに興味があるかってんだ!!」 「な、何を~!」 「鉄枷先輩!リンリンさん!落ち着いて!!」 「・・・・・・っていうか、“リンちゃん”とか“リンリン”ってもう決まっちゃったの?私の愛称として」 「「もちろん!」」 「ぐうううぅぅ!!あんのバカ界刺!余計なことを。今度会ったら一発ブン殴らないと気が済まないわ」 彼等159支部の面々は、現在風輪学園内で起きているある騒動の対処に全力を注いでいた。 そのため、普通ならほとんどのメンバーが巡回に出ている筈なのだが、今日は巡回等で知り得た情報の精査のため、 何人かの風紀委員メンバーが事務作業に集中していたのである。この話の顛末はまた別に語られることであろう。 今支部内にいるのは4人。鉄枷、湖后腹、一厘、そして・・・ 「フア~ッ」 「あれ?春咲先輩、どうしたんすか?そんな大きい欠伸をして」 「あっ。・・・ごめんなさい」 「い、いや、別に謝る程のことじゃ無いっすよ。さ、最近は熱帯夜も続いていますし。なあ、湖后腹?」 「そうっすね。俺も時々寝苦しくて夜中に目が覚めることもありますし」 「・・・ありがとう、鉄枷君、湖后腹君。ちょっと寝不足で」 「や、やっぱり!ぶっちゃけ俺の観察眼も捨てたモンじゃ無いな。ハハハ!」 「(春咲先輩・・・)」 1人で勝手に上機嫌になる鉄枷を尻目に、一厘は春咲の体を心配していた。 「(やっぱり、風紀委員と救済委員の掛け持ちは体力的にキツそう・・・。目の下にクマができてるみたいだし。でも・・・)」 注意深く観察すればわかる。春咲の顔がやつれているのを。化粧で隠しているようだが、同じ女性の一厘の目は誤魔化されない。 「(表情は明るくなった。公園で見たあの切羽詰った顔に比べたら格段に。・・・やっぱりあの人のおかげなのかな・・・)」 鉄枷や湖后腹と会話する春咲の表情は、意外にも弾んでいた。普段は余り饒舌では無いあの春咲がである。 その変化に一厘は安堵すると同時に悔しさも滲ませていた。 「(・・・悔しいなあ。本っ当に悔しい・・・。こうなったら・・・)」 「ん?何ボーっとしてんだ、リンリン?」 「ゴメン。ちょっと巡回に行って来る。私の分まで事務作業頑張ってねぇ」 「はあ?何勝手なことを・・・」 「それじゃあ~」 「おい、こら!!」 鉄枷の制止も振り切り、一厘は支部を後にする。そんな一厘の行動を怪訝に思う3人であったが・・・ 「よお!事務作業頑張ってるか!!」 「破輩先輩!巡回終わったんすか!?」 そこに159支部のリーダーである破輩が巡回から戻って来た。破輩は帰って来て早々に、冷蔵庫から飲料水を取り出し、中身を喉へ送って行く。 「今日も暑い、暑い。こりゃあリンちゃん当りに巡回を代わってもらった方がよかったな」 「・・・リンリンさんなら今さっき巡回に出ましたよ。当番じゃ無いにも関わらず」 「何!?ったく巡回するつもりがあるなら、初めから言っとけっつーの。疲れがドーっと出てきたわ」 湖后腹の言葉を聞いて一気に脱力する破輩。思わず備え付けのベンチに腰を下ろす。 「佐野はまだ巡回中か・・・。リンちゃんはいないが・・・まあいい。お前等、ちょっと集まれ」 「えっ?」 「何すか?」 「ぶっちゃけいい話っすか?それとも悪い話っすか?」 破輩の号令を受けて集まる鉄枷、湖后腹、春咲の3人。破輩はポケットに入れていたあるチラシを取り出し、3人に見せる。 「実はな・・・。今回掛かり切りになっている件が終わったら、パーっと騒ぎたいと思ってな。この店に予約をしようと思うんだが」 「あ!俺、この店知っています。最近噂になっている焼肉屋『根焼』じゃないっすか!」 「おっ!さすがは湖后腹。よく知っているな。実は、この前のバイキングで一緒になった『シンボル』の不動に教えてもらってな」 そのチラシには『根焼』の名前と地図、そしてどこか怪しい風貌をしたサングラスの男がプリントされていた。・・・肝心の肉が写っていないが。 「おい、湖后腹。ぶっちゃけこの『根焼』ってトコの肉って旨いのかよ?」 「俺は食べに行ったことはないっすけど、巷じゃ旨いって評判になってますよ、ここ」 「へぇ・・・焼肉屋か。美味しそう・・・」 「そ、そうっすよね、春咲先輩!ぶっちゃけ俺も最近夏バテ気味だったし、ここいらでスタミナを付けないといけねぇよな!ハハハ!」 「まあ、そういうわけだ。一段落ついたら味見も兼ねて一度食べに行ってみようと思うんだが」 「マジっすか!?」 「但し、男連中はダメだ。金が幾らあっても足りんからな。女だけで行く」 「ガーン!!!」 「でだ。春咲。明後日の放課後に行ってみようかと思うんだが、どうだ?時間は空いているか?」 「あ、明後日ですか?・・・・・・すみません。その日は用事があって」 「・・・・・・そうか。なら記立やリンちゃんを誘ってみるか」 「本当にすみません」 「別にいいよ。春咲が断るのには『何か大事な用事がある』んだろうし。よしっ、それじゃあ解散。とっとと仕事に戻れ、お前等」 解散の号令を発し、鉄枷達を仕事に戻す破輩。今現在対処中の事案にはこうやって無駄口を叩いている余裕、つまり時間を浪費している余裕は無い。 なのに、あえて破輩は時間の浪費を選択した。それは、春咲桜という仲間のことが気に掛かっていたからである。 「(とりあえず、表情は柔らかくなったか・・・。疲れてはいるようだが)」 破輩もまた春咲が疲労を溜めていることに気が付いていた。 「(今対処中の事案で疲労が溜まっているとも考えられるが・・・あれはそれだけじゃ無いと考えるのが妥当だな。 一厘が最近春咲をしきりに気にしているのも気に掛かる。・・・あのバイキングの後からってことも)」 さらに破輩は一厘が春咲を必要以上に気にしていることにも気が付いていた。さすがは159支部を纏め上げるリーダーと言ったところか。 「(不動に尋ねても「知らない」の一点張り。だが、あの男・・・界刺と言ったか、奴が関わっている・・・そんな気がする)」 あの時、店を後にした春咲を追うかのように界刺と水楯、そして一厘が店を後にしたことが破輩にはどうしても引っ掛かっている。 「(だが、今はそっちに時間を割く余裕は無い。全く・・・部下の気持ち1つマトモに察してやれないとは・・・リーダー失格だな)」 自分の机に戻った破輩は短く嘆息する。今は揺らいでいる場合では無い。懸案事項が幾つもある。リーダーたる自分に迷っている時間は無い。許されない。 それでもなお、破輩は視線を春咲に向けてしまう。それも、リーダーたる故の性と言うべきか。 「フア~ッ」 「どうした、そんな大きい欠伸をして」 「いやあ・・・最近寝不足で」 ところ変わって、ここは昼間の成瀬台高校の屋上。夏休みも近くなってきたせいか、授業も短縮ver.になっている。 「例の・・・救済委員活動か?」 「そう。深夜の活動がザラだから、睡眠が足りないな。そのせいで、この前のテスト結果も芳しくなかったし」 「そのかわり、最近は『シンボル』の活動や朝の鍛錬もセーブしているが?」 「やっぱさ、人間たるもの夜にキチっと寝ないと駄目だね。今回のことでそれがよーくわかったよ」 屋上で会話をしているのは界刺と不動。界刺が昼寝をしたいと言ったのでここにいるのだ。 丁度この時間帯の成瀬台の屋上には影が大きくなって昼寝にはもってこいのスペースがある。 「ただでさえ最近は暑いしな。本音を言えば、救済委員なんてすぐにでもやめたいくらいさ」 「だが、そういうわけにもいかんのだろう?なら答えは1つ。やり遂げるのみだ」 「・・・・・・ハァ~」 2人揃って横になって昼寝に突入しようとする界刺と不動。だが、 ピロロロロロ~ 「ん?何だ?くそっ、せっかく人が昼寝をしようと横になってんのに・・・。一体誰だ?」 面倒臭そうに掛かって来た携帯電話に出る界刺。そこから聞こえて来たのは・・・ 「何だよ、リンリン?折角イイ気分で昼寝に突入しようとしてたのに。目覚まし時計気取りですかー!リンリンだけに。全くこれだからリンリンは・・・」 「な、何よ!電話に出て一言目がそれ!?」 「君さ~、支部内で言われない?『コイツ、空気が読めないなあ』ってさ」 「い、言われたこと無いわよ!!アンタと一緒にしないでくれる!!」 「・・・相変わらず口が悪いねぇ、君」 電話主は一厘であった。実は先日春咲を尾行していた最中に携帯電話の番号を交換していたのである。 「で、何?何の用件ですか?リンちゃんサマ?」 「ブハッ!文句の1つ2つぶつけてやるつもりだったけど・・・まぁ、いいわ。そんなことより!私の用件はね・・・」 「春咲桜のことだよね?」 「わ・・・わかってるんなら最初から言え、アホ界刺!!」 一厘の用件とは・・・もちろん春咲のことである。 「とりあえず、今の所は何とか過ごしているよ。というか同じ支部員なんだし、君の方があのお嬢さんと接する時間は多いんじゃないの?」 「そ・・・それは。最近は色々ゴタゴタがあって、余り春咲先輩とも話す機会無いし・・・。それに私は風輪の生徒じゃ無いし・・・」 「つまり、君はあのお嬢さんのためにな~んもしてやれていないってこと?違うかい、リンリン?」 「そ・・・そんなこと!!・・・いや、そう・・・です、はい」 界刺の容赦無い指摘に一厘の声は小さくなっていく。何せやっていることと言えば気に掛けているだけ。実質的には何もしていないのと同じだ。 「まあ、それでも少しは接する機会はあるんだろう?今日だってさ。どうだったの、お嬢さんの様子は」 「今日は・・・何て言うか明るかったです。あの公園で見た時の顔とは雲泥の差でした」 「・・・そうか」 「・・・あなたのおかげ・・・なんですよね?」 「いんや、俺は何もしていないよ。彼女が明るくなったんなら、それは彼女自身の中で何かが変わり始めたんじゃない?」 「変わり始めた?」 「うん。結局さ、人ってのは他人が何を言おうが中々変わらないんだよ。それが変わるんなら、それは本人の意思ってことだと俺は思う」 「・・・」 「いい傾向なんじゃない?今の所は。これが続いたら・・・彼女は立ち直れるかもね。いや、立ち直るじゃないな。ようやく自分の足で立つんだな、うん」 「そ、それじゃあ・・・」 「だけど、そう簡単に行く程現実は甘くないとも思ってたりするよ、俺は」 「・・・どういうことですか?」 「君に調べてもらっていた件・・・つまり、彼女の家庭事情だ。元々君が教えてくれたんじゃないか・・・。あのお嬢さんは中々家に帰らないってさ。 これは俺の予測だけど・・・彼女の家庭事情も今後無視できなくなると思う。ただでさえ風紀委員『だけ』の時も中々家に帰らなかったんだ。 今はそれに加えて救済委員の活動もしているんだし、益々家にいないってことだろう?この現状を家族が不審がると考えるのは妥当な予測じゃない?」 「・・・春咲先輩が家に帰りたがらないのは、支部員全員が知っています。理由が、家族内のレベルの差ということも」 「確かご両親が著名な科学者。んで、その子供達・・・春咲家には三姉妹がいて、その内長女と三女がレベル4だっけか?大層なエリート一家だね」 「・・・それは春咲先輩に対する皮肉ですか?」 「別に。俺は感想を言っただけだよ。・・・リンリン、俺が言っていた長女と三女の能力の詳細はわかったかい?」 「・・・三女・・・春咲林檎については判明しています。ただ、長女の春咲躯園に関しては長点上機学園に通っているので、 彼女に関する情報は『書庫』を利用しても掴めていません。さすがは学園都市の中でも5本指に入る名門校。セキュリティもすごいです」 「そうか・・・。なら仕方無い。その三女・・・春咲林檎について教えてよ」 「わかりました・・・。言っときますけど、これはオフレコですからね。本当はこんな真似はしちゃ駄目なんですから」 「わかってるよ、リンちゃん」 というやり取りの後、一厘から春咲林檎に関する情報を聞いた界刺は電話を切る。 「どうやら思った以上に複雑そうだな」 「ああ、複雑だな。珍しく頭も使ってるしさ。全くいやになっちゃうよ、ホント」 「私から見れば、面倒臭がりなお前があの少女にそこまで肩入れする方が不思議ではあるがな。如何に命が懸かっているとはいえ」 『銅と明星、女神に象徴されるは金星。意味するものは、愛、調和、芸術。混沌とした世界に存在する真理を見通す偉大なる輝星』 『全く、酷いもんだ・・・この世界って奴は。馬鹿が馬鹿やって馬鹿な目を見ないと、“こんなこと”にさえ気付かせてくれねぇんだもんな』 「・・・似てるんだよ(ボソッ)」 「ん?何か言ったのか?」 「いや・・・何でもねぇよ」 不動の言葉に相槌を打った後に眠りに入る界刺。結局2人は夕方近くまで昼寝に没頭していた。 continue!!
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2014ULTRARARE VOL.2 カードNo TEAM 選手名 POS 投 打 球 変 コ ス 守 計 球種 スキル ピ 左 強 ラ キ ノ ク 疲 安 速 P M 走 送 守 計 守備適性 チ 左 バ 盗 弾 エ 走 送 安 捕 E14UR001 楽天 藤田 一也 二塁 右 左 61 84 72 74 93 384 二遊B 三C 逆境 流し打ち 内野安打 満塁 固め打ち 守備職人 スライディング 3 3 4 2 3 4 3 3 3 1 E14UR002 西武 高橋 朋己 抑え 左 左 87 57 69 60 55 328 スライダー3 フォーク2 剛球 3 3 3 3 3 4 3 2 3 4 E14UR003 ロッテ 角中 勝也 右翼 右 左 70 83 76 77 67 373 左中右C AH 流し打ち 内野安打 選球眼 3 4 3 3 3 3 4 3 3 1 E14UR004 ソフトバンク 長谷川 勇也 右翼 右 左 79 93 81 77 69 399 右C 左中D AH CM 逆境 流し打ち 広角打法 内野安打 初球 固め打ち 4 3 2 3 3 3 4 4 4 1 E14UR005 オリックス 平野 佳寿 抑え 右 右 83 75 78 69 62 367 スライダー3 Sカーブ2 フォーク4 威圧感 球速安定 スピン 3 3 3 4 4 4 5 4 3 4 E14UR006 日本ハム 大引 啓次 遊撃 右 右 72 74 77 70 85 378 遊B 二三D 内野安打 満塁 5 3 4 4 2 4 4 3 3 1 E14UR007 巨人 菅野 智之 先発 右 右 78 61 83 79 74 375 カットファスト2 Sカーブ3 Vスライダー3 シュート3 打球反応 3 3 3 3 3 3 3 3 3 4 E14UR008 阪神 能見 篤史 先発 左 左 73 77 75 86 69 380 スライダー4 カーブ2 フォーク3 3 4 3 3 4 3 4 3 3 3 E14UR009 広島 丸 佳浩 中堅 右 左 81 85 84 73 71 394 中C 左右D CM 流し打ち プルヒッター 内野安打 初球 固め打ち 選球眼 3 3 3 4 4 2 4 3 3 1 E14UR010 中日 森野 将彦 一塁 右 左 81 84 64 72 76 377 一三C 二E 流し打ち プルヒッター 満塁 初球 選球眼 4 3 3 2 4 2 3 2 3 1 E14UR011 DeNA 山口 俊 先発 右 右 83 69 61 80 70 363 スライダー2 カーブ2 Vスライダー3 シュート1 3 3 3 3 3 4 3 3 4 4 E14UR012 ヤクルト 山田 哲人 二塁 右 右 63 79 86 70 67 365 二C 三E 遊D 大舞台 AH CM 初回先頭打者HR 3 4 2 3 3 2 3 2 3 1 2014ULTRARARE VOL.1 カードNo TEAM 選手名 POS 投 打 球 変 コ ス 守 計 球種 スキル ピ 左 強 ラ キ ノ ク 疲 安 速 P M 走 送 守 計 守備適性 チ 左 バ 盗 弾 エ 走 送 安 捕 B14UR001 楽天 ジョーンズ 一塁 右 右 91 73 58 78 60 360 一左中右D 威圧感 PH プルヒッター 満塁 選球眼 3 3 1 2 5 2 3 2 3 1 B14UR002 西武 浅村 栄斗 二塁 右 右 90 84 77 70 72 393 一C 二D ラインドライブ CM サヨナラ 流し打ち 初球 満塁 固め打ち 4 3 3 3 4 2 4 2 3 1 B14UR003 ロッテ 今江 敏晃 三塁 右 右 70 84 68 75 67 364 三C 大舞台 AH CM 流し打ち プルヒッター 内野安打 初球 4 4 3 3 3 3 3 3 4 1 B14UR004 ソフトバンク 攝津 正 先発 右 右 72 70 80 83 61 366 スライダー2 カーブ3 Hシンカー3 シュート1 大舞台 勝負運 打球反応 3 3 3 3 3 3 2 3 4 3 B14UR005 オリックス 金子 千尋 先発 右 左 72 74 83 96 73 398 カットファスト2 スラーブ3 チェンジアップ3 オリジナル1 シュート2 打球反応 球速安定 スピン ナイトゲーム 3 3 4 3 3 3 3 3 2 3 B14UR006 日本ハム 中田 翔 左翼 右 右 88 77 67 86 71 389 一三D 左C 威圧感 PH CM レーザービーム 連発 3 3 1 2 5 3 3 3 3 1 B14UR007 巨人 阿部 慎之助 捕手 右 左 95 82 50 78 67 372 捕C 一D 威圧感 PH プルヒッター 選球眼 4 3 1 1 5 3 3 3 3 4 B14UR008 阪神 鳥谷 敬 遊撃 右 左 75 84 81 83 80 403 遊B 二三E CM 選球眼 流し打ち 初球 満塁 3 3 2 3 3 4 4 4 3 1 B14UR009 広島 前田 健太 先発 右 右 80 63 83 88 80 394 スライダー3 Sカーブ3 Vスライダー2 サークルチェンジ2 シンキングファスト1 打球反応 4 3 3 3 3 4 3 4 4 4 B14UR010 中日 谷繁 元信 捕手 右 右 66 59 57 71 88 341 捕B 満塁 ブロック 3 3 3 2 3 4 3 3 3 5 B14UR011 DeNA ブランコ 一塁 右 右 100 90 60 71 52 373 一E 威圧感 PH CM 逆境 初球 固め打ち 体当たり 連発 5 3 1 2 5 2 3 2 3 1 B14UR012 ヤクルト バレンティン 右翼 右 右 100 82 70 90 59 401 左中右D 威圧感 PH 広角打法 初球 固め打ち 選球眼 レーザービーム 連発 3 4 1 1 5 3 3 3 3 1
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸なHappy days 選択と決着 終章 独白と幸福 『だから、たまにはアンタからも誘えっての!!』 「美琴サン、『アンタ』に戻ってます。朝っぱらからそんなに怒鳴らなくても」 『モーニングコールいらないのね「いります、ごめんなさい」よろしい』 上条はなんだかんだ言っているが、彼女との会話にニヤニヤしている。 「しかし、しかめっ面は眉間に皺できるぞ」 『うるさいっ!!『あら、御坂さん』あ、婚后さ『なにをニヤニヤと、……ああ、あの時の殿方ですね!!』ちょっ、ちょっと!!!』 増えるのは笑い皺のようだ。 ん? 婚后さん? 「……美琴様、今何時でせう??」 『えっ『あの時は』八時の十分前だけど?『苦戦しましたが』』 「なんで!!? 交代で七時にって約束だろ!!?」 『しっ『最終的には』仕方ないじゃない、ドキドキして通話ボタン押せなかったんだから『向こうから白状しましたわ』』 「美琴かわいいなぁ。……ってちがーう!! それだと遅刻しちゃうでしょオレが!!?」 『そっそれくらい『やはり』受け入れなさいよ。かっか彼氏でしょ『この婚后光子に畏れをなしたのでしょう』』 「かわいいけど、モーニングコールやめるぞ『ごめんなさい。許してください』はぁ」 不幸だ。と呟き、どたばたと準備する。 今までとは異なる朝の風景にようやく慣れてきた。 朝食を要求するインデックスも、朝食をかすめ取る猫もいない。 あの日常が楽しかったことは否定しない。 でも、 『今日はセブンスミストにいかない?』 「……またゲコ太か?」 『ブフゥ!! な、なんのことよ!!』 「また、ちょうどフェアがあるなんて知らなかった~だろ。わかったよ」 こちらの幸せをオレが選んだんだ。 これで周りが泣いたとしても、オレは、オレだけは後悔してはならない。 そして絶対に後悔なんてするわけがない。 『な~にだんまりしてんのよ?』 「……美琴」 『何よ?』 「好きだぞ」 『ふぇ? わっわ、たっ、しも、しゅしゅしゅきにょ!!』 「ははは……」 この道を美琴も歩いてくれているから。 左手薬指にある、キューピッドアローのタグリングが、一層輝いた気がした。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸なHappy days
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ここは、第6学区にあるコンテナターミナル。第6学区を主な活動場所にしている過激派救済委員の溜まり場。 「それにしても、刺界・・・じゃ無かった、その界刺っていう『シンボル』の変人は結局来なかったわね、雅艶?」 「・・・あぁ。俺としても驚いているくらいだ。あの『シンボル』の一員ならば、必ず助けに来ると踏んでいたが・・・」 躯園や雅艶達過激派は、この溜まり場で今後の方針を話し合っていた。 直近では春咲桜へ制裁を与えたことに対する穏健派の出方、中長期的では第6学区をうろついている風紀委員への対策。この2点が主な主題である。 「しばらくは、ここに集らない方がいいのではないでしょうか?一時の間は風紀委員達も第6学区に絞った活動を行うでしょうし。 それに、先程の戦闘にて荒我拳は176支部の風紀委員と繋がりがあることが判明しています。これは、情報の漏洩という観点から見ると大きな問題です。 もっとも、荒我自身も救済委員で『あった』ため、彼等が親しい関係ならば他の風紀委員に私達の情報が漏れる可能性はそこまで高くは無いと思われますが・・・」 「私も七刀君の意見に同意するわ。それに、ここは穏健派にも知られている。もし、今回の制裁に対する報復を彼等が考えているとしたら・・・」 「報復!?・・・雅艶兄ちゃん・・・」 「心配するな、羽香奈。確かに刈野の言っている可能性も十分に考えられる。だが、俺達と全面衝突を果たして穏健派の連中が選択するかどうか・・・可能性は低いと思うがな」 「何弱気になってんのよ、雅艶、羽香奈、刈野。あのクズを助けに来ない時点で、奴等の本音なんて手に取るようにわかるわ。 要するに、私達を敵に回したくないのよ。もし、その覚悟があるなら、あの負け犬や『裏切り者』が来る前に助けに来てもおかしくないわ。 それなのに、連中は私達へ“制裁の中断”というすぐにでもやれる交渉・・・つまり連絡の1つすらよこさなかった。わざわざ、羽香奈からメールを送ったっていうのにね」 「さっすが、躯園姉ちゃん!頼っもしい!!」 「林檎。あなたは私が必ず守るから安心なさい。どう、麻鬼?私の推測は?」 「春咲の言い分はもっともだ。奴等穏健派は総じてレベルが低い、あるいは高くても戦闘に向いていない連中だ。 対して、俺達は皆レベルも高く、戦闘にも通じている。何を企んでいようとも、あんな弱腰の連中に遅れなど取らない。違うか、雅艶?」 「・・・あぁ、そうだな」 躯園や麻鬼の主張は的を射ている。穏健派は自分達過激派との衝突は望んでいないだろう。真実を言えば、自分達過激派も穏健派との衝突は望んではいないのだ。 仮にも、同じ土俵で共に戦う同士である。思考や方針の違いこそあれ、仲間であることには違いない。 今回の春咲桜への制裁は、あくまでも『裏切り者』への制裁と、今後は『裏切り者』を発生させないという強い意思を示したに過ぎない。 ちなみに、荒我と斬山の2人は過激派の中で既に『裏切り者』として扱われている。故に、議題にも上がらない。制裁が決定事項であるからだ。 「だからこそ、奴が・・・あの変人だけは春咲桜を助けに来ると予想していたんだが。どうやら、奴にとって春咲桜とは命を懸けるに値しない存在でしか無かったようだな」 「難しい言葉で言わなくてもいいじゃない、雅艶。つまり、あの出来損ないのクズは一緒に救済委員に入った仲間にも見捨てられたってことよ。ホント、傑作だわ」 躯園の高らかな嘲笑がターミナルに響く。雅艶は、界刺についてこれ以上考える思考を回すことをやめる。今は、それ以上に気を割かなければならない事案がある。 「そうだな。もう終わったことについて議論しても仕方無い。とりあえず、目下の懸案は荒我と斬山、この『裏切り者』達への制裁と穏健派の出方を注視すること。 そして、風紀委員への警戒。以上3点が・・・・・・」 「・・・・・・?どうしたの、雅艶?急に黙りこくって?」 急に黙り込んだ雅艶に怪訝な視線と言葉を発する峠。だが、雅艶は言葉を返さない。その顔には一筋の汗が流れていた。 「な、何だこれは・・・!!?」 雅艶が発した驚愕の声に異変を察知した過激派は、周囲へ気を張り巡らせる。 荒我達『裏切り者』が攻め込んで来たのか。風紀委員に見付かったのか。否、そのどちらでも無い。 「あ・・・あれ・・・。な、何・・・?」 最初“ソレ”に気付いたのは羽香奈。主に、立ち位置的な理由で。 彼女はある方向に向かって指を指す。その方向から聞こえて来たのは・・・轟音。 「あ、あれは・・・!?」 刈野が“ソレ”を見て顔を青ざめる。 “ソレ”は・・・“水”。 「何・・・だと・・・!?」 あの麻鬼すら焦りの色を隠せない。“水”は・・・自分達に向かってくる“水”はただの水じゃ無い。それは、まるで・・・“激流”。 海面に接していないこの場所で起こり得る筈の無い光景。大型のコンテナさえも押し流しながら突き進んで行くその頂上に・・・居る者達。 「峠!!何時でも『暗室移動』で転移できるように構えておけ!!」 「わ、わかった!!」 「おい、雅艶!これは、一体誰の仕業だ!?お前なら、『多角透視』ならその姿を捉えているんだろう!?」 峠に指示を出した雅艶に麻鬼が問い掛ける。そして、雅艶は重い口を開く。 一番可能性が低いと判断した現実が・・・雅艶達過激派に牙を向けるために出現した。 「あぁ・・・。奴等が来た」 「奴等!?それは、一体・・・?」 「穏健派の連中と・・・『シンボル』の変人だ!!」 「何だと!??」 麻鬼は、今度こそ驚愕の声を漏らす。 穏健派は・・・自分達過激派との全面衝突を覚悟してここに現れた。雅艶の言葉からそう察したがために。 「この“激流”を操っているのは、おそらくはあの変人の仲間・・・『シンボル』の一員だろう。それ以外にも・・・風紀委員の腕章を付けている女も居る」 「風紀委員?まさか、穏健派の連中・・・」 「いや、穏健派とて救済委員には変わりない。如何に風紀委員の中に救済委員を認める変わり者が居たとして、それは極一部だ。おそらく、あの変人の伝手か何かだろう」 「・・・確かに。他に俺達の知らない人間は居るのか!?」 「・・・!!いや、他は全員見知った連中だ。だが、これは・・・春咲!!」 「な、何よ!?」 雅艶は麻鬼との会話を中断して、躯園に声を掛ける。 “激流”が差し迫っている恐怖から足が竦んでいる林檎に身を寄せながらも、躯園は雅艶に反応する。 「あの“激流”の頂上に、お前がよく知っている女が居るぞ!!」 「私の知っている?そんな女・・・・・・!!ま、まさか・・・!!」 雅艶の言葉を受け、ある可能性に気付く躯園。 それは、彼女の頭の中から既に消えていた存在。 「あぁ、そのまさかだ!!あの頂上に・・・お前の妹、春咲桜が居る!!!」 顔が驚愕に染まる躯園。それは、林檎や雅艶以外の過激派の者達も同様に。 あれ程の地獄(せいさい)を味わいながら、それでも屈せずに自分達の前に姿を現した春咲桜の『凱旋』に。 「うおおおおおぉぉぉっっ!!!!」 「何を情けない声を挙げているのだ、農条!!だらしがないぞ!!!」 「師匠の言う通り!!これしきのことで・・・ズブズブッッ!!!」 「言ってる傍から沈んでじゃ無ぇよ、ゲコ太!!うおっ!!」 「で、でもこれは・・・。バランスが・・・!!」 「くっ・・・!!あ、あなたと言い、この“激流”と言い、“宙姫”対策で待機しているあの2人と言い、『シンボル』は化物の巣窟か何かですか!?」 「化物呼ばわりは酷いなぁ、リンちゃん。それに・・・君、あのバカ形製を忘れてるよ。そうだ、化物呼ばわりも含めて後でアホ形製にチクっとこう」 「!!そ、それはやめて下さい!!私が形製さんに潰されます!!!」 「にしても涙簾ちゃんの“コレ”・・・久し振りだなぁ。ハハッ、何だかサーフィンで波に乗ってるみたいだ」 「慣れているからって余裕ぶっこいてんじゃ無いですよー!!幾ら作戦だからって、過激過ぎじゃないですかー!?」 「物静かな娘程過激なんじゃないか?さっきのお嬢さんの行動でも思ったけど」 「!!!」 「過激・・・。ポッ!///」 「水楯さん!?別に褒めてなんかいませんからね!?」 「というか、あのことは早く忘れて下さい!!く、くそっ!な、何で私、あんなことを・・・」 「こりゃ、驚いた。お嬢さんの口から『くそっ!』なんて言葉が出るなんて。ってかあれを忘れろって言う方が無理と言うか・・・」 「も、もうー!!!不条理だー!!!!最悪だー!!!!この、バカ界刺ー!!!!」 「春咲先輩・・・逞しくなっちゃって。よーし、だったら私も!この、アホ界刺ー!!!!」 「・・・・・・何だか、形製の言葉が広まりつつある・・・。俺、悲しい」 “激流”の頂上でギャーギャー騒いでいるのは、界刺、春咲、水楯、一厘、農条、花多狩、啄、ゲコ太、仲場。 この“激流”は、水楯の能力『粘水操作』によって操作されている。1000tを軽く超える水量は、近辺にあった幾つかの屋外プールから引っこ抜いてきたもの。 水楯にとって、水とは粒(水滴)の集りという認識である。そう、それはまるで“涙”の如く時には冷たさを、時には激しさを伴って集う集合体。 故に、彼女が操る“激流”とは“激流”にあらず。その姿を見た界刺が思い付きで付けた渾名・・・“激涙の女王”を水楯は気に入っていた。 自分の名前の一部が渾名に入っていることが秘かなお気に入りポイント。但し、恥ずかしくて誰にも言ったことは無いが。 この“激涙”が響き渡らせる轟音こそが、過激派達に告げる反逆の咆哮であった。 「ぶはっ!!ハァ、ハァ。ったく余裕綽々だなぁ、界刺は。俺なんか、サーフィン代わりの小型コンテナの上に乗るのにも一苦労だってね!!」 「こんなもん慣れだ、慣れ。農条も経験を積めばこの乗り心地を楽しめると思うぜ?」 「いやっ、慣れたくなんかないってね!こんなの、今回限りで十分だ!!」 界刺達は“激涙”の上に乗るために、各々に小型コンテナの幾つかが割り当てられていた。 小型コンテナ間は『粘水操作』で固定されているのだが、さすがに水の流れは凄まじく、その上に安定して乗るというのは農条に限らず他のメンバーも四苦八苦していた。 “激涙”の支配者である水楯と、慣れているという界刺は平然と小型コンテナの上に座っている。 何故か啄だけは、農条達のように四苦八苦するどころか不安定な小型コンテナの上に仁王立ちしているが。 「さて、そろそろ向こうさんも気付いた頃合いかな・・・。花多狩姐さん!」 「!!」 界刺が花多狩に問う。 「やれるね?」 「・・・えぇ。やるわ。やり切ってみせる」 花多狩にとって凄まじい覚悟を迫られる“ソレ”を、しかし花多狩は受諾する。その目には、悲愴にも似た決意の光が宿っていた。 「ようし。それじゃあ、皆手筈通りに・・・」 「界刺さん!」 「ん?何だい、リンリン?」 作戦を開始しようとした界刺に一厘が声を掛ける。その手に握られた・・・界刺から預かった“モノ”を胸の前に置きながら。 「春咲先輩のこと・・・よろしくお願いします!!」 「一厘さん・・・」 「うん、お願いされた」 それは、一厘の心の底からの頼み。そこには、嫉妬も何も無い。ただ、純粋に目の前の男を信頼したからこその頼み。 界刺に春咲のことを頼む一厘の顔には、笑みさえ浮かんでいた。それは、彼女の確かな成長。 その一厘の変化に春咲は驚き、界刺は何時も通りの飄々とした態度で応える。 「では、皆さん・・・そして界刺さん。ご武運を・・・!!」 「ありがと、涙簾ちゃん。お前等、絶対にタイミングを外すんじゃねぇぞ!!“燃やされたスーツの敵討ち作戦”開始だぁぁ!!!!」 「「「「「「「「だからそっちいぃぃっっ!!!!????」」」」」」」」 界刺の作戦名に総出でツッコミを入れながらも、“激涙”は勢いを増して突き進んで行く。 「ど、どうするのよ!?私の『暗室移動』で、とっととここから脱出する!?」 「そ、そうだ。あたしの『音響砲弾』であの水を操っている奴に大音量をぶち込めば・・・」 「馬鹿言え!そんなことをすれば、いよいよあの“激流”は操作不能に陥って俺達を飲み込むぞ!?あの勢いだ。まず、逃げられない!!」 「そ、それじゃあ、やっぱり私の能力でさっさと移動するか、奴等の誰かをここへ転移させて・・・。 くそっ!“激流”が不規則に上下するせいで、うまく奴等の座標を計算できない・・・!!」 峠、林檎、麻鬼が怒声を交えながら話し合っているのを余所に、1人雅艶は考え込む。それは、『敵』の襲撃について。 「(あの後、春咲桜は奴等が保護していたのか・・・。そして、『シンボル』の1人であろうあの女の能力を借りてまで俺達に危害を加えようとしている。 つまり、穏健派の連中は俺達と全面衝突する覚悟で来たということ。あの少女に、あの『裏切り者』にそこまでの価値があるのか?理解できん!)」 穏健派の行動原理が読めない雅艶。だが、今はそんなことに時間を割いている余裕は無い。“激流”はいよいよ雅艶達の直近に差し迫って来た。 「峠!!ここは一先ずお前の『暗室移動』で退避する!!連中への対処はそれか・・・」 「キャッ!!?」 「うおっ!!?」 「むっ?どうした、峠!?麻鬼!?」 「空に幾つもの光源が浮かび上がった!!これは・・・」 「・・・駄目!!これだけ明るかったら『暗室移動』が発動できない!!」 「光源・・・!?くっ!!あの『シンボル』の変人の仕業か!!!」 麻鬼と峠の言葉から、光源の存在とそこに込められた意図を理解する雅艶。『敵』は暗闇では絶対的な移動能力を誇る峠の『暗室移動』を封じるつもりなのだ。 「界刺という男の仕業か!!確か光学系能力者だったか!?」 「おそらく。しかし、それ程の光源を生み出せるとは・・・。光学系と言っても既にある光を操るのでは無く、電子制御系能力者のように光を生み出すタイプなのかもしれん!!」 麻鬼の問いに己の推測を交えながら返答する雅艶。実の所、盲目の雅艶には能力で生み出された光源は全く影響が無い。『多角透視』自体も光学系能力は一切無効なのである。 無効・・・すなわち、雅艶には光学系能力で隠されている何かを見付けることができても、光学系能力自体を感知することはできないのだ。 これは、界刺が身を持って体験したことによる推測でもあり、そしてその推測は当っていた。今後この推測に基づくある作戦が行われる予定だが、今の雅艶には知る由も無い。 「ど、どうするのよ!!私の能力は発動できない!!“激流”はもう目の前!!このままじゃあ・・・」 「・・・関係無ぇよ」 「き、金属操作!?」 峠の焦り声に言葉を返したのは、今まで沈黙を守っていた金属操作。その表情には、苛立ちが如実に表れていた。 「あっちが“激流”なら・・・こっちも“激流”をぶつけてやりゃあいい!!!」 前髪で隠れている金属操作の目が見開かれる。その視界に収まる金属―大型コンテナ―が瞬く間に液状化される。高温を伴って。 自ら金属操作と名乗るこの名前は、彼の能力名でもある。厳密に言えば、人名の方は名前の通り金属操作、能力名としては『金属操作 メタルコマンド 』という風に区別しているが。 彼の視界に入る金属は、全て彼の支配化に置かれる。そして、支配下に置いた金属類を自由自在に鋳造する。これが、彼の能力『金属操作』の真髄である。 「ムシャクシャする・・・。イラつきが収まらねぇ・・・。こうなったら、あいつ等をぶっ潰して晴らしてやる!!」 液状化した大量の金属を壁状に集め、“激流”にぶつけようとする金属操作。 「待て、金属操作!!それなら、集めた金属を使って影を作ることで峠の『暗室移動』による脱・・・」 「うらああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」 雅艶の制止はイラついている金属操作には届かない。彼の意思により発射される金属の壁が“激流”と衝突する・・・瞬間!! ザアッ!!! 「!?」 金属操作は意表を突かれる。何故なら、金属の壁と衝突する瞬間、“激流”が中程から真っ二つに裂けたからだ。 まるで、初めからそうするよう構えていたように。でなければ、あれ程の水量を瞬間的に操作することはできない。 金属操作が放った金属の壁との衝突を避け、とてつもない勢いで左右に分かれる“激流”。 プシャアアアアァァァッッッ!!!! 2つに分かれた“激涙”が、更に変化する。それは、まるで水でできた蜘蛛の巣。網目状に張り巡らされた水の道には、等間隔で小型コンテナが設置されていた。 「一厘さん!!」 「わかってますって!!水楯さんもフォローをお願いします!!」 それは、水楯と一厘の能力によってできた、空中を走る水の道。 1個に割ける重量が15kg以下に限られる一厘の『物質操作』によって操作・維持される小型コンテナを、水楯の『粘水操作』にて補助する。 水楯の『粘水操作』では、小型コンテナの正確な設置を行うことができない。そのために、一厘の『物質操作』が設置の役割を負う。 その水の道を、界刺達が駆け抜けていく。各々が小型コンテナに乗った瞬間に『物質操作』は維持できなくなるが、『粘水操作』にて極短時間だけそれを支える。 「(このために、この場所の地図が必要だったんだ)」 一厘は、今更ながら界刺が自分へ依頼して来た件の真意を理解する。水の道を敷くに最適な場所は何処か。 その時に過激派の連中が居る位置次第で最適は変わる。だから、その予測パターンを幾通りも出すために、自分の懺悔すらまともに取り合わずにあくまで地図の伝達を急かしたのか。 『俺って光を操る関係上、周囲の位置取りとかって気にするんだよねぇ』 作戦概要を説明中に界刺が放った言葉を、一厘は身を持って体感していた。だから、この体感を絶対に無駄にはしない。そう、心の中で誓った。 そう思う間に、界刺達は無事コンテナに乗り移った。作戦第1段階がもうすぐ終わる。そして、自分と水楯に割り振られたもう1つの作戦を実行に移す。 それを発動するために少し離れた位置に居る水楯が、水の道を1本の水柱へ変化させる。 「・・・・・・圧縮!!」 突如水の道に敷き詰めた、数多の小型コンテナを取り込んだ水柱が圧縮された。小型コンテナが軋み、あちこちが凹む程に。 その直後、圧縮されて球とも四角とも取れる形になった水の1点に―あえて勢いを付加して―圧縮から開放した水流を集中させる。 「・・・・・・・・・っっ!!!」 「はあああああぁぁぁっっ!!!」 水楯でもコントロールし切れない勢いで、水ごと小型コンテナが放出される時が来た。方向、角度等の微調整は一厘が整える。そして・・・“ソレ等”は解き放たれた。 continue!!
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少女のういういdays ―――とある寮の一室 「ばか当麻!」 そろそろ日も落ちようとする、たそがれ時。 空気を裂くような叫び声と、バチンッという音がした直後、ある部屋のドアがズバァッと開き、少女が飛び出してきた。 今にも溢れんばかりの涙を目に浮かべた彼女―御坂美琴―は、風巻くほどの速さで走り去った。 パタンッという音と共に、開きっ放しだったドアが閉まる。 風が吹いたりして勝手に閉まったわけではない。 ドアノブを握り、外界から自分の部屋を遮断したのは、黒い髪がウニのようにトゲトゲした少年である。 幾度もの不幸に見舞われ、しかし最近は有り余るほどの幸運に包まれている少年。 その少年は現在、頬を赤く腫らしていた。 というのも、先ほどの空気を震わせたような音は、いつもの雷撃ではなく、彼の右手の効果領域の外の攻撃―――手っ取り早く言ってしまえば、美琴の怒り120%がこもった強烈な平手打ちによるものだったのだ。 「痛っつー…アイツ、電気使い以外の能力も持ってるんじゃねぇか?」 一人で呟いてみるが、そんなことをしたところで痛みは引かない。 「はぁ…あんなに怒った美琴は初めてだな…そりゃそうか…」 先ほどの状況を思い出し、頬と、それから胸の奥がずきん、と痛む。 「とあるカエルのマスコットがイギリスでまさかの大流行!」 いつものようにお昼ご飯を一緒に食べ、午後のゆったりとした時間を共有していたとき、点けっ放しにしていたテレビからそんな言葉が飛び出した。 常盤台のお嬢様はレベル5の誇る超スピードで、ぴくっと反応し、テレビの方へ顔を向けた。 アナウンサーの話によると、日本から帰国したとある少女がそのカエルマスコットを所持しており、そこから爆発的に広まり、ついには英国限定商品なんてご当地アイテム的な物まで売り出されるらしい。 「ほれみなさい!ゲコ太の愛らしさはもう世界基準なのよ!!」 ニュースに釘付けだった美琴は、上条の方へ顔を向け、勝ち誇ったような声をあげる。 そして、私たちもおそろいの…と言いながら上条の携帯に目を向け、その動きを止める。 ―――今までたった一つだけ付いていた緑色のストラップが無くなっている。 カエルを模したキャラクターのついたそれは、美琴にとって大切な想い出の一つでもあり、自分の携帯にも同じ物が下がっている。 「あれ…当麻?携帯どうしたの?」 「携帯?ん、あ、あぁ、ストラップですか…?」 「まさか…アンタ無くしたって言うんじゃないでしょうね!?」 曖昧な上条の返事に彼の不幸属性を足し合わせた結果、美琴は苛立ちを覚える解答を導き出す。 「いやいやいやいや!そんな恐ろしいこと!!」 「じゃあなんでストラップを外してるのよ!理由を聞かせなさい!」 美琴の周りでバチバチと空気が帯電する。 言葉を選んでいるような上条の様子に、その電圧はどんどん高まっていった。 「まさか…また私に隠し事でも―――」 「う…実は…、ちょっといま御坂妹に貸しててな…」 「え!?なんで!?」 予想外の返答に空気中の電気が霧散していく。 「べ、別に…やったわけじゃねぇよ。ちょっと貸してるだけで」 「そういうことじゃないの!」 歯切れの悪い答え方に、いらつく美琴。 目に涙が浮かぶのは、怒りのせいだけではない。 「だって…あれは大切な想い出で…二人の初めてのおそろいで…」 なんとか気持ちを鎮めようとするが、衝動的に湧き上がる様々な感情に言葉を繋ぐのが難しくなる。 「だから貸してるだけだって。ちゃんとすぐ返してもらうから」 「そんな言葉聞きたくないわよ!!私の気持ちなんて一瞬も考えなかったんでしょ!!」 それで件のばか発言である。 怒りから能力の制御を諦めた美琴は、その右手を渾身の力で振り抜き、そのまま上条の顔を見ることなく部屋から走り去っていった。 それから3日間、二人は会話どころか、会うことも連絡をとることもしなかった。 こんなことは恋人となって以来、初めてのことである。 美琴をこよなく愛するパートナーである(上条の恋のライバルとも言う)黒子ですら、上条っ気のない美琴に違和感を抱き、不安を覚えるほどだ。 「お姉様、あの殿方と何かありまして?」 黒子はベッドに俯せにになる美琴へ声をかけた。 ここのところ毎日、美琴はずっとベッドに倒れ込んでいる。 今日は休日ということもあり、もうお昼を過ぎているにも関わらず、美琴は朝からベッドを離れていない。 理由は明らかだと思う。 思うのだが、今までその理由を問うことが出来ずにいた。 「別に…」 やっとの決心で投げ掛けた問いに対して、返ってくる言葉はあまりに素っ気無いものであった。 いや、この美琴の様子を見れば、返事があっただけでも僥倖なのだろうか。 「この数日、ずっとお一人でいらっしゃる様子ですし、黒子は心配ですの」 「別に大丈夫よ。たまに会わない日が続くのだって、おかしくないでしょ」 「それはそうですが…」 ならば、どうしてそんな顔をするのか、と黒子は思う。 いつもの活発ではつらつとした表情は、どこにも見ることができない。 いつまでもこんなお姉様は見ていたくない。 黒子は苦しい面持ちを隠し、わざと明るい声を上げることにした。 「それでは、今日は黒子と女同士水入らずで愛を育みましょう、お・ね・え・さ・ま♪」 テレポートで颯爽と美琴の隣りに現れた黒子は、愛するお姉様の細い体に抱き付き、柔らかな肌へと手指を這わせた。 いつもの怒鳴り声&ビリビリ攻撃が来るのは覚悟の上だが、それで日常を少しでも取り戻せるのであれば安いものだ。 「黒子…?………そうね、たまにはアンタと過ごすのもいいかもね……」 予想外の返答に、黒子の動きが止まる。 あまりに乾いた言葉。 求めていた答えは、それではない。 「………嫌ですの」 「何よ、自分で誘ってきたんでしょ。いつもだったら喜んで飛び付くとこじゃない」 「………お姉様、何がありましたの?」 「何もないって言ってるでしょ!アイツのことだって、黒子には関係ないじゃない!」 黒子の肩がビクッと震えた。 それも望んでいた答えではない。 美琴の放つ一字一句が心の奥に突き刺さり、胸を抉るような痛みを感じる。 しかし、黒子はそこに美琴の中にある不安の一端を垣間見た気がした。 そこで黒子は一切の感情を抑え、極めて優しい声で美琴に語りかける。 「お姉様、元よりわたくしには茨の道しか残されておりませんの」 パートナーの言葉の内に何かを感じ取ったのか、美琴がぴたりと動きを止める。 「一緒に過ごすお二人の笑顔を陰より見守るのか、ふさぎ込み傷付いたお姉様のお隣りで、一人偽りの笑顔を浮かべて過ごすのか」 「黒子…」 「ならば一人でも笑顔の多い世界を望んで何が悪いのでしょうか」 「黒子……」 「大切なお姉様。傷つけると知って、あえて申上げます」 一呼吸おく黒子。 真剣な表情に、美琴は目をそらすことができない。 「お姉様は、上条様を信じることができませんの?」 今度は、美琴が肩を震わせた。 実は自分でも分かっていたのだ。 上条は自分に対して『何か』をしたわけではない。 ただ、彼の行為が許せなくて、その真意が掴めなくて、衝動的に感情をぶつけてしまったのだ。 「何があったのか、わたくしには分かりませんし、そのことで何かを申し上げる資格がないのも自覚しておりますの」 一言ずつ絞り出すような黒子の口調に、美琴は自分がどれだけ後輩の心に傷を負わせたのかを理解した。 その事実を受け止め、美琴は黒子の目を真正面から見つめ、次の言葉を待つ。 「あの類人猿は心底頭にくる存在ですが、お姉様の全てを受け止められる方はあの方しかいらっしゃらないのでしょう?」 もちろん超能力という意味だけではなく、と言葉を続ける。 痛いほど突き刺さったその言葉は、しかし暖かみに満ち溢れていて、そして―――今の美琴には、非常に心強かった。 「ごめんね…黒子…」 「まったくお姉様は常盤台のエースなのですから、こんなことで一々お気持ちを揺るがせてはなりませんの」 「…ありがとう、黒子」 頬に涙の筋を浮かべた美琴は、それでも僅かに笑顔を向ける。 いつものお姉様の笑顔に黒子はパッと顔を赤らめて目を逸らし、早口にブツブツと呟きを漏らした。 「お、お姉様がわたくしにありがとう…!黒子、人生最大の喜びを噛み締めておりますの!………それにしても、あの類人猿、お姉様をこれほどの失意の底へと追い込むなんて、今後どんな振る舞いをしたところで、ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・で・す・の…」 黒子が『真っ黒子』になっている中、突然ゲコゲコという電子音がした。 二人はバッとその発信源へと首を向け、次にお互いの顔を見合わせた。 無言でうなづく黒子。 美琴は軽く深呼吸をして、ゆっくりとゲコゲコ携帯を開く。 「会いたい」 たった4文字。 肯定も否定もない4文字。 その4文字に美琴は言葉にならぬ安心感を抱いていた。 瞳に力が宿る。 ―――きっと大丈夫。 「黒子、」 手早く靴を履き、行ってきますを告げるために振り向くと、自分の後輩が右手を伸ばすのが見えた。 「私の愛する常盤台のエースは、男一人をモノにするくらい、お手の物なんですのよ」 ヒュン、という音が鳴り、エースはその姿を消す。 部屋にはツインテールの少女が一人残された。 「行ってらっしゃいませ、お姉様」 少女は、ため息混じりに呟く。 先ほどは、あぁは言ったものの、やはり胸の奥にちくりと刺さるものがある。 こんな顔は見せたくはない。 それにしても――― 「たった4文字に負けるなんて、本当に憎たらしい男ですの」 ふっ…と、ほんのわずかに、雫がこぼれた。 ―――とある公園 「ったく…場所も知らせないで会いたいってどういうつもりよ!」 茶色い髪をした少女が目の前の少年へと声を掛ける。 その声には怒りも含まれていたが、同時に喜びや安心のような感情も混じっていることに美琴は気が付いた。 彼と同じ時間を共有すること、その大切さを改めて実感する。 「すまん…ちょっと緊張しててな…」 「う…まぁ…それは私にも原因があるというか…」 むしろ大半は自分のせいなのではないかと思うのだが、やっぱり自分だって傷ついたし悩んだしで、素直には言葉に出来ないものだ。 「あの…な…、美琴…」 「う、うん…、何、当麻?」 重い車輪がゆっくりと回り出すように、二人は言葉を交える。 「ストラップのことだけど、俺、お前の気持ちをちっとも考えてなかった…」 「ううん…、私だって、何も聞かずにぶっちゃって…ごめんね、痛かった…?」 「まぁな…ビリビリ以外に能力でも持ってるんじゃないかと思ったぜ…」 上条は、痛みを思い出すように頬をなでる。 「ご、ごめんね!そんなに力を入れるつもりは無かったんだけど…」 「いや、あれは俺が悪かったんだし、美琴は気にしないで良いんだ。あのストラップが大切な物だってことは、ちゃんと分かってたのにな」 「当麻…」 上条に優しく撫でられ、うっとりとした目をする美琴を見て、腫れが引いて本当に良かった、と思う。 実は、次の日に真っ赤に腫れ上がり、誰かに会うたびに、いい気味だ、とか、ざまあみやがれ、とか、ついに上条神話の崩壊か!?なんて言われたのは絶対に秘密だ。 「さてさて美琴さん、今日お呼びしたのは、他でもなくストラップを外した理由をお伝えしたかったからなのですよ」 「う、うん…!」 上条の軽い調子に、美琴は逆に緊張の様子を浮かべる。 あれから何度もその理由を考えたのだが、決定的な解答を導き出すことは出来なかった。 無くしたわけではないとすると、なぜ上条は大切なストラップを外してしまったのだろうか。 そんな疑問を抱く美琴に、上条はポケットからリボンのついた小さな袋を取り出す。 「これ…お前にプレゼントしたかったんだ」 「え…?」 予想外の言葉に困惑しつつも、その贈り物を手にする。 「あ、ありがとう…。開けていい?」 「あぁ、そのために渡したんだからな」 細い指でリボンを丁寧にほどき、袋を開く。 「これ―――!」 中から美琴が取り出したのは、小さなティーカップを手に、不敵な表情を浮かべるカエルの人形である。 ご当地限定ですよ!と言わんばかりに、そのカップにはイギリスの国旗がデザインされている。 「英国限定発売のゲコ太じゃない!!どうしたの!?」 「いや、この間インデックスさんから電話がかかってきましてね」 約一週間前、真夜中に上条家の電話が鳴り響いた。 こんな時間に何ですかこのやろー間違い電話だったらただじゃおかねーぞこの酔っ払いめ、なんて不平たらたらで受話器をとると、元居候さんからであった。 インデックスの話によると、イギリスでは今、ゲコ太がかなりの大流行であり、それを持ち込んだ彼女も一部のファンから伝道師扱いされているらしい。 はっきり言って、大食い少女が信者様方からたらふくお菓子や食料を頂戴したとかいう話は心の底からどうでも良い話だったのだが、その大流行グッズのイギリス限定版が出るという話には上条の耳もぴくりと食い付きを見せた。 …結論から言えば、インデックスが役立ったのは情報提供までであった。 伝道師と持ち上げられていても、彼女自身はゲコ太に対してなんの執心もない。 ただでさえ品薄な商品を手に入れるために努力をするなんて、一日の大半を食に追われているシスターには考えの遠く及ばぬ領域の話なのだ。 しかし、そこに救いの女神が降臨する。 それが御坂妹だった。 浮かない顔で街を歩いていた上条に、相変わらずの薄い表情と妙な口調で、どうしたのですかと呼び掛けてきたのだ。 上条は別に頼るつもりもなく、自分の目下の悩みを話した。 すると、イギリスにいる別個体に調達を依頼すれば良い、と一瞬で問題を解決してくれた。 その後、上条は彼女にジャンボなフルーツのパフェをご馳走することになったのだが、それでも上条には御坂妹が天の御使いに見えた。 「それで、探すための手掛かりとしてストラップを渡してたってわけなのですよ」 「えっ…?」 長き説明を終え、さぁこれですっかり仲直りですよ、と考えていた上条は、美琴の上げた驚きの声に怪訝な顔をする。 「どうした、美琴?これでみんな解決万々歳だと上条さんは思ったりしているのですが…?」 「あのさ…あの子たちなら、誰か一人に一度でも見せればみんなに伝わるんじゃないの?」 「………あれ?」 時が止まる。 あれあれ、今回の大ゲンカって実は不要でした?例のあれってやつ?いつものパターンですか?なんて考えがよぎった瞬間――― 「………ア…ン…タ…ってヤツはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 会えなかった数日の間に溜め込んだストレスを全て吐き出すかのような雷撃に本気で死期を悟った上条は、生物としての反射でその目を閉じながら、これまでの経験から来る反射で右手を突き出した。 …が、いつもの僅かばかりの手応えすらやって来ないことを不思議に思い、両目を開いた。 すると、 「御坂妹…?」 自分の恋人とそっくりな顔立ちをした少女が、自分を庇うように立っていた。 「なんでこ…」 「ばか!!!!!アンタ何やってんの!?」 なんでここに、と問う前に、美琴の怒号がそれを遮った。 「私が瞬間的に逸らさなかったら、アンタは死んでたかもしれないのよ!?」 「すみません、とミサカは自分の衝動的な行為に対して謝罪の意を表明します」 まだ怒りの表情を浮かべる美琴に対して、感情の起伏が少ない妹。 それを見ていた上条は、冷静さを取り戻し、先ほどの疑問を御坂妹にぶつける。 「そうだ、お前どうしてこんなとこにいるんだ?」 「お姉様、ゲコ太探しのために、このストラップを貸すように言ったのは私です、とミサカは自分の嘘を告白します」 上条の質問を思いっ切りスルーした御坂妹は、スカートのポケットから例のストラップを取り出し、美琴にそれを見せる。 「アンタが?なんでそんなこと…。自分でネットワークの使い方は分かってるんでしょ!?」 「…その質問に返答する前に、あなたは先に自分の家へ帰ってくれませんか、とミサカは自分の願いを直球で伝えます」 今度は美琴の言葉に答えず、上条の方へ顔を向け、『お願い』をした。 人のこと思いっ切りスルーしておいて二言目にはそれですか…、と上条は面食らったが、御坂妹の薄い表情の奥に、何か真剣なものを感じ、分かった、と一言告げると寮の方へ歩みを向けた。 「ちょ、ちょっと当麻!」 「よく分からねぇけど、多分妹は大切な話があるんだと思う。ウチの鍵は開けておくから、いつでも来いよ」 じゃあな、と告げると、上条は本当に去って行った。 その背中が見えなくなるまで、同じ顔をした二人の少女は黙っていたが、やがて美琴が口を開いた。 「それで…、アンタはどういうつもりなの?」 「嘘をついたことは謝ります、とミサカは素直に自分の非を認めます」 「それよ。アンタがこのゲコ太を手に入れるのに力を貸してくれたのは嬉しいんだけど、なんで当麻のストラップを取るようなことをしたの?」 それさえ無ければ、今回の件は全てハッピーエンドである。 上条と妹達からのサプライズプレゼント、それだけではなぜいけなかったのか。 「…寂しかったのです、とミサカは自分の感情を吐露します」 「えっ…?」 今日何度目だか分からない驚きの声を上げる。 「あの人と一緒に過ごすようになってから、お姉様が病院に来て下さることが、ほとんど無くなってしまいました、とミサカは甘えたい盛りの少女であることをアピールします」 「あ…」 そういえば、と思い返す。 上条と恋人同士になる前は、週に1、2回は妹達のいる病院に顔を見せていた。 そしてその回数は今、確実に減っている。 「ごめん…」 今日は謝ってばかりだな、と思いながら、頭を巡らせる。 妹達は見た目こそ自分と同い年だが、その内側にあるものは違う。 まだ幼い心は、きっと家族とも言える自分との繋がりを強く求めている。 そんな中で、突然姿を見せることがなくなれば、不安に襲われるのも当然であろう。 「アンタは…私に自分のことを見て欲しかったの…?」 「それも、あります。とミサカは自分の正直な想いを言葉にする決心をします」 「それ『も』…?」 含みのある言い方に眉をひそめる。 妹達がこのような言い回しをするのはとても珍しいことのように感じる。 「ミサカは意地悪をしてしまいました、とミサカは自己嫌悪に陥りながらも自分の罪を認めます」 「意地悪?」 「お姉様。お姉様が、あの人と一緒に過ごしてる姿を見ていると、ここが痛むのです、とミサカは不可思議な現象に困惑します」 御坂妹は、痛みに耐えるように目を閉じながら、その手を胸に当てた。 「アンタ、それって…」 それは恋――― しかし、美琴はそうとは告げられなかった。 妹のもつあやふやな感情に名前をつけてしまったら、妹がその気持ちの存在に気付いてしまったら…たった7人しかいないレベル5、学園都市第3位の美琴にも怖いものがあった。 「―――ごめん…ごめんね…」 だから、ただ謝るしかなかった。 「なぜお姉様が謝るのですか、お姉様を傷つけたのはミサカが原因ではないのですか、とミサカは理解を超えた状況に疑問を浮かべます」 「そうかもしれない、けど」 辛い表情を浮かべる美琴に、妹は淡々とした口調で言葉を繋げる。 「あのストラップは、ほんのちょっとの間、その日のうちに返そうと思っていました」 「しかし、手にした途端、ミサカの中に嫌な気持ちが広がったのです」 再び御坂妹の表情が曇りを見せる。 言葉を発する毎に間を空けるのは、自分の心中を言葉にし尽くすことが出来ないからだろうか。 「あの人の付けていた物。それがミサカの手元にあるということに夢中になってしまいました。でも…」 陰が、さらに広がる。 「すぐに見ていても空しいだけになりました。見る度に辛い気持ちになりました…」 一度、言葉を区切る。 ここまで自身の想いを言葉にするのは初めてのことではないだろうか。 慣れないことをしているからか、次の言葉を紡ぐ前に御坂妹は軽い深呼吸を挟んだ。 「やっぱり…このストラップはあの人とお姉様の物なのです、とミサカは長い独白をここに閉じます」 「アンタは………。…ごめん、頭ん中ぐちゃぐちゃすぎて、何て言っていいか分かんない…」 顔を右手で覆い、頭を抱える美琴の様子を見ながらも、妹は言葉を続ける。 それは、自分が冷静に想いを言葉に出来るうちに、なんとか美琴に伝えようとしているように見える。 「お姉様、ご存じですか。あの人は嘘が苦手なのです」 「この数日、お姉様とあの人が一緒にいる姿を、どのミサカも見ませんでした」 「一度、どうしたのかと聞いたのですが、大丈夫だとしか言いませんでした。が、その顔は苦しそうでした」 先ほどと同様に、頭の中の想いを言葉にし尽くせないようで、一言ずつに間を設ける。 「お姉様でないとダメなのです、あの人は、とミサカはお姉様に絶対的な真実を突き付けます」 「もういい…!それ以上続けちゃ駄目!アンタが苦しいだけじゃない!」 妹の肩に手をおき、その言葉を止めようとする。 「大丈夫ですよ。お姉様とあの人が幸せそうにしてることがミサカの喜びなのです、とミサカは笑顔で二人を祝福します」 その笑顔は、こぼれた涙の線でいっぱいだった。 まるで自分の涙に気が付かないように、御坂妹はその歪んだ笑顔を向け続ける。 「もうやめなさいよ…。…嘘が下手なのは、アンタもじゃない…」 自分の想い人が恋人へ贈るプレゼントの相談を受け、さらにはその用意までする。 その心の痛みとは、どれほどのものだろうか。 「ごめんね、私だけが良い気でいて…ごめんね、気付けなくて…ごめんね、臆病で…」「お姉様、この痛みは何ですか…、この涙は何ですか…、とミサカは制御の効かない感情に恐れを抱きます」 「それはね…、それがね…」 先ほどは言えなかった言葉。 しかし、苦しいほどに共感できる胸の痛みを知って尚、それを隠し続けることは出来なかった。 「それが…、恋、よ」 一言ずつ押し出すように呟く。 声と共に溢れた涙が美琴の頬をつたう。 「そうですか、これが、恋。では…ミサカのこれは、失恋、なのですか、とミサカは…胸に…穴が空いたような痛みを…」 御坂妹は、ほとんど言葉にならない声をかすれさせ、美琴へと倒れこんだ。 久し振りの繋がりを求めるように、美琴を細い腕で抱き締める。 美琴も、同じように手を回し、さらに雫をこぼした。 最後の問いには答えられなかった。 しかし、今自分は目の前の妹を支えてやらなければならない。 同じ顔をした二人は、その体を寄せ合い、お互いを暖め合うようにして何十分も涙を流し続けた。 ―――とある寮の一室 公園で妹と別れると、美琴はその足で上条の家へと向かった。 着いてすぐ、美琴は再び泣いた。上条の胸に抱かれ、ただただ涙を流し続けた。 その痛みを上条はほとんど知ることは出来ない。 何があったのかも分からない。 しかし、何も言わず、上条はただただ抱き寄せ、頭をなでてやった。 「ごめんね、いっぱい泣いちゃって」 やっと落ち着いたのか、美琴が顔を上げた。 「すっきりしたか?」 「ちょっとはね…ありがと。…ねぇ、当麻?」 「ん、なんだ?」 「私…当麻にばっかり夢中で、大切な後輩や妹達も放っておいて、ダメな女だね…」 自傷的な言い草だが、上条はそこに贖罪を求めるような表情を感じた。 「お前はレベル5とか言われてるけど、全然完璧じゃないよな」 「うぅ…」 茶化すような上条の口調に安心感を抱きつつ、うなだれる美琴。 自分で分かっていても、人から言われると、ちょっぴり重い。 「でもさ、誰も彼もを大切にする、そんな器用なこと出来るヤツなら、そんなに心の深くから繋がり合えないんじゃないか」 「…どういうこと…?」 まだ頭がスッキリしきっていない美琴は、上条に説明を求める。 俺は何があったのかよく分からないんだけどな、と前置きをして上条は再び口を開いた。 「全ての人を大切にするとか、全ての人を選ぶとかって、結局誰も選んでないってことだろ。それって、大切な人がいないのと同じだと思うんだ」 「…うん」 「お前はさ、今まで大切なことを選び続けたし、そうやって努力を重ねてきたんだと思う」 遊びより勉強!とかな、と上条は付け足す。 その言葉に、美琴はなるほどと思い、自分のことを分かってくれる上条に何だか嬉しいやら照れくさいやらで、くすぐったい感覚を得ていた。 「でもさ、今はきっとその大切なことがたくさんあるんだよな。あっちもこっちも大事にしなきゃ、でも体も心も一つしかない」 「…うん…。なんだか…当麻が頭良く見える…」 「うるせぇな、俺だってたまにはやれば出来る男なんですよ。人生の先輩ナメんな」 人生の経験値(記憶的な意味で)では、実は上条の方が年下だったりするのだが、ここではあえてスルー。 「それで、俺が言いたいのは、大切にしなきゃ、なんて思わなくていいんじゃないか、ってことだ」 「えっ…でも…」 自分を慕う後輩も、妹も、二人とも傷つけた。 それでいて自分だけのうのうと笑っていられない。 「別に大切にしなくて良い、ってわけじゃないぜ。大切だと思ってれば、それだけで良い、って意味だ。お前だって、他の誰かに大切にしなきゃ、とは思われたくないだろ」 「そうだけど…」 上条の言うことは納得できる。 出来るのだが、自分ばっかりそんなに救われていいのだろうか…。 「いいんだよ」 「―――!!」 まるで心を読まれたような発言に言葉を失う。 「お前が大切に思える人ってことは、お前が心から笑っていれば、一緒に幸せになってくれる人なんだろ。だから、そんなに自分を追い詰めなくていいんだよ」 「…私…笑えるかな…?」 「ったく、何言ってんだ」 心底呆れたという顔で、上条は美琴の髪をくしゃくしゃとなでつける。 瞬間、美琴はすぅっと心に日の光が差したように暖かみを感じる。 「俺がずっと側にいてやるんだぜ。お前を不幸になんてさせないよ」 「…ぷっ、何よそれ、自分の不幸自慢?」 上気する頬を隠すように、上条の鼻をつつく。 してやられた。 もう自分は笑顔を取り戻しているじゃないか。 「ほら、笑った」 やっぱり見透かされていた。 こんなときばっかり勘が良いんだから、と美琴は口許を緩める。 「常磐台のエースであるお前も、二人きりのときに甘えるお前も、たくさんのものを大切にしたいお前も、みんな合わせて御坂美琴だろ」 上条の言葉は、一つ一つが胸にじんわりと染み込んでいく。 この安心感に、何度も救われているのだ。 「でも、どんなお前も、笑顔でいる時が一番、魅力的だよ」 …ぎゅ。 自分より少しだけ高いところから抱き締められる。 この感触は久し振りだ。 とくん、と胸が高まる。 やっぱり自分ばかりが良い思いをしている気がして少し気が引ける。 しかし、都合の良い話だと思うのだが、上条の言葉は何の疑いもなく信じることが出来た。 まずは、自分の笑顔から。 「当麻、私、幸せよ」 だから、その喜びを認めることが出来た。 「そうだな。お前は幸せ者だよ。大切だと思える人がいるってことは、幸せなことだ」 「何一人で悟ってるのよ。でも、本当にそうだと思う」 「だろ?だから俺も、すぐ隣にお前がいてくれて幸せなんだよ」 唇が触れ合う。 数日ぶりのくちづけは、ちょっぴり恥ずかしくて、とっても嬉しくて、それから、涙の味がした。 「もう…」 これからも同じ悩みや違う悩みに襲われることがあるだろう。 でも、彼の言葉は自分の悩みなんて、すぐ誤魔化してしまうのだろう。 でも、今はそれをただ認めるのはまだ少し悔しかった。 だから、色んな想いを込めて言葉を贈る。 親愛なる恋人へ。 「…ばか当麻」 とある少女のういういdays5―つづく― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少女のういういdays
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ーーーーー学園都市には人々の知らぬ「闇」が存在する。 それはまるで、底の無い沼のように。 それはまるで、光の入らぬ闇夜のように。 一度足を踏み入れれば二度と戻れない。這い上がることの出来ない無間地獄。 この物語は、そんな学園都市の「暗部」を生きる、修復者(デバッカー)達の物語であるーーーーー ~~side H~~ XX年一月一日:置き去り用収容施設「ガーデン」にて 時刻は午後11時。摂氏0度。身を刺すような寒さの中意識が浮上してきた。 「・・・・ん!・・・・・さん!」 誰かの声が聞こえる。さて、微睡みの世界を泳ぐのはそろそろ終わりだ。・・意識が覚醒する。 「・・・さん!人臣さん!聞いてますか!」 ・・・?・・・ああ。どうやら少し眠っていたらしい。 そういえば覚醒薬を服用してから既に3日経つ。 そろそろ服用し直さなければならないだろう。 人臣「聞いてるよ。それで?何の話だっけ?」 聞いてないけど。 研究員「聞いてないじゃないですか・・・。今回確保できた「置き去り」は15人です。」 15人。他の研究者との競合を考えれば上出来だろう。 それだけの数があるならば、しばらくは研究にも遊びにも困らないハズだ。 人臣「ご苦労さま。それじゃ、ボク達は一足先に研究所に戻るよ。 「置き去り」達は、トラックが来たら勝手に運んでくれるから」 そういってボクは車に乗り込む。・・・と、隣の人間が何か言いたそうだ。 人臣「何か問題でも?」 研究員「いえ・・・。何も人臣さん自ら運転することは無いんじゃ・・・。 眠たそうにされていましたし、私に任せて下さっても構いませんが。」 ・・・この人間は何も分かっていない。他人の運転する車に乗ることなど ボクにとって何の価値もない。 人臣「それには及ばないよ。運転は数少ないボクの趣味なんだ。 キミはそれを奪うつもりかい?」 そう、車はいい。ボクの聞きたいことだけに答えてくれるし、 何よりも余計なことは言わないし。愚かな人間よりもよっぽど優秀だ。 研究員「いや、そういう訳ではないですが・・・。人臣さん見た目が子供だから、 運転してるの見てると不安d(ビシィ! って、痛いじゃないですか!?」 人臣「人を見た目で判断するのは感心しないねぇ。ボクはこれでも立派な大人なんだが」 自分で言うのは癪だが、ボクの見た目は10歳前後の幼子と見紛う程に幼い。 ・・・これでも成人はしているのだが。 まあ、こんな人間の戯言に付き合ってる暇もない。 ボクはアクセルに足を掛けると研究所へと車を飛ばした。 チラリと目を横にやると「置き去り」のリストが目に入った。 彼らのこれからを考える。彼らはこれからボクの実験の被験者となる。 被験者、といえば聞こえはいいが要するに実験用のマウスのような物だ。 どう考えたって無事では済むまい。心から壊れていく者もいるだろう。 ・・・・堪らない。これだから研究者はやめられない。 人は壊れていく様は、何にも勝る芸術だ。どんな人間であろうと散り際は美しく、 そして人は散りゆく過程こそが美しい。 研究の結果など二の次だ。この美しさに比べればレベル6すら些細なことでしか無い。 人臣「・・・これから、楽しくなるなぁ・・・。フフフ・・・。」 研究員「何か言いました?って、人臣さんって笑うと意外とカワイイd(ズビシィ!!」 人臣「無駄口を叩いてる暇があるなら、今回の被験者から具合の良さそうなのを見繕っていてくれ」 車は研究所へと近づく。ボクの運命を変える出来事が待っているとも知らず。 ーーーーーこの後、ボクは一人の少女と出逢う事となる。 そう、後にも先にも二度と出逢う事の無いであろう逸材と。 彼女との出逢いがボクを含む学園都市の暗部を変える事になるのをボクはまだ知らないーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーとある科学の問題修復(チャイルドデバック)ーーーーーーーーーーー ~~side H~~ XX年一月十五日:人臣上利の所属する研究所「名前まだ決めてねぇ」 人臣「・・・ぅん。」 ・・・どうやらまた眠っていたらしい。覚醒薬に耐性がついてしまったのかもしれない。 暇を見て、配合を変えてみる必要がありそうだ。でないと不測の事態が起きる可能性がある。 ・・・因みに、覚醒薬というのは 「脳を活性化し睡眠を取らずとも100%の機能を発揮できる」という代物だ。 研究員「失礼します。人臣さん、ご報告が・・・。仮眠中でしたか?あれでしたら出直しますが。」 人臣「それには及ばないよ。・・・それで、報告ってのは?イレギュラーでも起きたかい」 イレギュラーがあったというのなら逆にありがたい。 最近は実験の進展も見られなくなって来たところだ。何かしらの変化が欲しいところだし。 研究員「いえ、それが。実験の下準備のためにこの前連れてきた被験者達に能力開発を行っていたのですが・・・」 被験者の一人が能力を発現したような素振りを見せました。」 へぇ・・・。この短期間で能力を発現するとは。中々素質がありそうな人間だ。 素質のある人間はそれだけ成果を出しやすい。 同時にそういう人間は壊れてく様もまた様になる。 人臣「把握したよ。今後はその被験者の動向に注意していてくれ。そのうちボクも様子を見に行く」 研究員「了解しました。それでは、失礼します」 研究員の置いていった資料を手に取る。 歳は・・・6歳か。被験者の中では年齢が高い方だ。最も、そう珍しい訳でもないが。 『目で追っていた虫が何の前触れもなく落下した』 『ガラスの壁の向こうのペンがいつの間にか移動していた』 『一瞬だが、瞳が光ったように見えた』 前の二つを見る限り念動力系か・・・?しかし三つ目は何だ?視覚がトリガーとなる能力か? ・・・ここで考えても今は答えが出そうにない。次の報告を待つとしよう。 そう思い目を閉じる。案外早く眠りはやってきた。・・・少し疲れていたのかもしれない。 XX年二月十五日 人臣「これは・・・。」 一ヶ月後。再びボクの所へ報告が上がってきた。 『同室にいた被験者が何の前触れもなく吹き飛ばされるという事案が発生。 原因は室内で発生した原因不明の強風によるものであり、 また、彼女のみ被害に遭っていないことから彼女の能力が発現した結果と思われる。』 人臣「空気使いか・・・。 いや、しかし発現からまだ間もないのに人を吹き飛ばすような強風を起こしたのか? だとすれば、条件次第ではレベル5にもなれる器かもしれないな・・・」 ・・・これは、一度実物を見ておく必要がありそうだ。 そこまでの能力者であるならば、安易に他の被験者と同じプログラムを課すのは愚策だ。 高位能力者が対象ならば、今までと違う結果が出るかもしれない。なにより・・・。 きっとこの「おもちゃ」ならボクを満足させてくれるに違いない。 そんな期待がどこかにあった。・・・根拠もなく。 XX年二月十六日:被験者収容室 研究員「おや。人臣さんが出てくるなんて珍しい。・・・例の被験者についてですか?」 人臣「ああ。少々気になることがあってね。一度実物を見ておこうかと」 そういって収容室の中を見る。 例の事態が起きた後で、再発を防ぐため個室が与えられたらしい。 肝心の被験者は・・・。どうやら奥の方で俯いているらしくここからでは顔が見えない。 人臣「中に入っても構わないかい?」 研究員「え!?危ないですよ!さっきあんな事があったばかりなのに」 人臣「問題ないよ。危険があるならさっさと引き上げるさ」 そういってドアを開錠する。部屋の中に入っても特に変わった様子はない。 奥にいる被験者の元へと近づく。・・・動く気配が無いようだが、これはまさか・・・。 ???「・・・スゥ。・・・スゥ。・・・ぅん」 寝ている・・・。この状況で昼寝が出来るとは、なかなか図太い神経の持ち主のようだ。 何にせよ、ここまで来たからには顔位は見ておきたい。 人臣「君、起きなさい」ユサユサ 肩を揺する。揺すりながら思う。 この状況は他人から見ればかなりシュールではないのだろうか。 自分は既に成人しているが、見た目の年齢はこの被験者とそこまで変わらない。 十歳に満たない幼子が二人並んだこの状況で、 片方が「君、起きなさい」と肩を揺すっている。 ・・・まるで何かのごっこ遊びのようだ。 そんな事を考えている内に目の前の被験者が目を覚ます。 ???「・・・ぅ。あなた、だあれ?」ムクリ 顔を上げる。その顔を見て、まず思ったことは・・・ 人臣「猫・・・」 そう、猫である。何もそのままの意味ではなく その顔立ちや髪型が猫を連想させる、というだけの話だが。 大きな瞳に整った顔立ち、そんな顔面から視線を上げれば猫の耳と見紛うような癖の付いた黒髪。 ・・・そんな事はどうでもいい。被験者など所詮ボクのおもちゃに過ぎない。 彼女もこれからボクのおもちゃになると思うと楽しみで仕方ない。 人臣「ボクは人臣上利。この施設の責任者だ・・・と言っても伝わらないか。」 ???「・・・?ひと、おみ。それがあなたの名前?」 人臣「そうだ。 ・・・要するにキミは、これからボクの言うことを聞かなくてはならない。分かるかい?」 この研究を続けてきて思うことは子供の扱い難さだ。 無知な子供たちはボクの言うことを理解できず、 かといって間違った事を言えばそれもしっかりと覚えてしまう。 不必要なものが多すぎるのだ。 ???「そっかぁ・・・。あなたも私に痛いことするの?」 人臣「・・・ああ。痛いことも苦しいこともするつもりだ。キミ達にとってボクは絶対なんだ。 キミ達はボクのおもちゃなんだから。」 ???「いやだ、っていってもやめてくれないの? ・・・くれないんだね。ひとおみっていじわるなんだね。」 意地悪とは、また妙な言い方をするものだ。 自分の命を奪うかもしれない相手に対する言葉にしては随分軽い。 まぁ、6歳の幼子にこんな事を言っても仕方ないが。 ???「わたしの名前もいわないとね。・・・しほ。しほう しほ(四方 視歩)だよ。」 「四方 視歩」か。・・・いや、なかなか大していい名である。 というか、書類にも書いてあっただろうにそれを確認してなかったのか。 そこまで集中力に欠けていたのだろうか。そろそろ少し休暇を取るべきか。 そんな事を考えていて、ふと気づく。なぜこの子はこちらに向けて掌を向けているのか。 嫌な予感と共に彼女の口が開く。 四方「わたしね、すごいことに気が付いたの。こうやって手を向けて・・・。 『飛べ』って思うとホントに飛んでいくんだよ。」 人臣「ッ!?」 迂闊だった。能力が発現したのならこう言う可能性も考えるべきだったのだが・・・。 だがこんなことは初めてである。 置き去りの子供たちが明確にボクに敵意を向ける事はこの時点では多くない。 幼さゆえに自分がされている事が理解でき無い。 ボクという現況に危害を加える、という発想に至らないのだ。 その時起きた事は至って簡単である。 彼女の能力で生み出されたのであろう強風でボクが吹き飛ばされただけのことである。 ・・・だが、その威力は単純では済まなかった。 吹き飛ばされたボクは壁に打ち付けられ、尋常ではない衝撃を受けた。 四方「あれ?ひとおみ、どうしたの?・・え、ひと・み。ねぇ・・・ば!」 まずい、意識が遠のいてきた。 不覚をとった自分への憤りと共に自分がどこか歓喜を覚えていることに気がつく。 こんな子は初めてだ。恐らく彼女にはボクに対する敵意は無い。 にも関わらずボクに対して能力を躊躇なく使ってきた。 それが異常な事だとは微塵も思わず、さも当然のように。 ・・・きっと彼女もボクと同じ「異常者」なのだろう。 その事実が何よりもボクを歓喜させたのだ。 「異常者」が「異常者」を壊す。これ以上なく滑稽且つ、愉快ではないか。 ボクの全力をもってこの子を壊してみせる。 そうすれば、ボクは今までにない何かを掴めそうな気がする。 怒りと喜びが混ざり合った複雑な感情を抱きながら、 さながらTVの電源が切れるようにボクの意識が消失した。 ーーーーーこの出会いは、それこそ「運命の出会い」だったのだろう。 この話は、ここから紡がれる彼女たちの物語の序章の始まりに過ぎない。 この英雄譚というにはあまりに不格好で稚拙なこの物語の序章は、 不肖このボクを語り部として進んでいく。ーーーーー
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者 第1章 ③罪を背負いし者と最後の妹 一方通行は死を覚悟していた。 (例え、俺がどンなに腐っていてもよォ。 誰かを助けようと言い出す事すら馬鹿馬鹿しく思われるほどの、どうしよォもねェ人間のクズだったとしてもさァ) 目の前の1万人以上殺してきた少女と同じ顔をした幼い少女…打ち止めを蝕むウィルスを駆除する治療は間も無く終わる。 しかしその前に天井亜雄の放った銃弾が自分の頭を撃ち抜くだろう。 まるで走馬灯のように自分の過去が頭の中を巡りぬける。 初めて妹達を殺した時は本当に殺すつもりなど無かった。 ただ去ろうとした自分に00001号が発砲して言うなれば自害したようなものだった。 だがその瞬間、一方通行は自分の中の何かが壊れたような気がした。 誰も傷つけないために目指した無敵。 しかし無敵になるためには2万人の命を奪わなければならない。 絶対的な矛盾が一方通行に妹達を殺すことを踏み止まらせていた。 しかし皮肉にも妹達の一人の行動が一方通行の中の何かを徹底的に壊してしまったのだった。 (このガキは本当ォは俺が殺したくなかったなンてほざきやがった。 確かに俺は殺すことに戸惑いはあったかもしれねェ。 でもそれならあの三下が妹達の一人を助けに来た段階で、実験を止めなきゃなンなかったはずだァ。 だが俺は実験を止めるどころか止めに入った三下を殺そォとした。 いくらこのガキが俺の性善説を説こォとも、俺の性根が悪であることには間違いねェ。 でもよォ…) 間近に迫ってくる弾丸を肌で感じながら一方通行は神に祈るように願う。 (それでもこのガキが犠牲になっていい訳がねェ。 だからもし糞ったれなこの世の中に神様がいるってェなら… ほんの少しでいいから時間を、俺に時間をくれェ!!) そして一方通行の願いに応えるように奇跡がその場に舞い降りる。 治療を終えるより早く一方通行の頭を撃ち抜くはずだった弾丸が一方通行を襲うことはなかった。 そして打ち止めの治療を終え一方通行の意識が現実に戻った時、 一方通行の目に飛び込んできたのは実験を止めた上条が天井亜雄を殴り飛ばす姿だった。 辺りを見渡すと美琴がこちらに向けて手を伸ばしているのが分かる。 (そォか、オリジナルが磁力を使って弾丸を止めたのか) 皮肉なものだ、一番自分を恨んでいるであろう相手に命を救われた。 そして美琴の後ろには芳川桔梗の姿が見える。 自分のやるべきことは終わった。 しかしその場を去ろうとする一方通行のことを上条が呼び止めた。 「待てよ、逃げてるんじゃねえぞ」 「俺が逃げるだとォ? おい三下、てめェ誰に向かって口を利ィてるのか分かってンのかァ?」 「助けた女の子に顔も見せずに立ち去ろうとする気障野郎だろ?」 「…」 ふざけた奴だと一方通行は思う。 あれだけの死闘を演じておきながら、この男は自分に臆することなく話しかけてくる。 もう一回戦ったら絶対に自分が勝つと一方通行はそう思っていたが、 いざ上条を前にするとこの男に自分は勝つことは出来ない、そう思わせる何かがあった。 「何で今になってお前が妹達の一人を助けようとしたのかは分からねえ。 でもお前は身を呈してあの子を救おうとした。 そうさせるだけの何かがあの子との間であったんじゃねえか?」 「だったらどォだっていうンだよ!? 今更アイツらに頭を下げて許しを請えってェのか!? 1万人以上殺した俺がどンな面して…」 「甘えるなよ。 どんな理由があったにせよ、お前は1万人の命を奪ったんだ。 そういう意味では実験の発端になったDNAマップを提供した美琴にも罪はあるかもしれない。 でもお前の罪と美琴の罪は比較にならない、このことは言わなくても分かるな?」 「…」 「美琴はその罪を背負って前に進もうとしている。 そしてお前も妹達に対する贖罪のために命を懸けようとした、違うか?」 「…そンなに立派なもンじゃねェ。 あのガキはこんなクズな俺に…アイツらを虐殺した俺に笑顔を向けてくれた。 それで柄にも無くあのガキを助けてェと思っちまった。 俺には誰かを助けるよォな資格なンてねェのによォ」 「誰かを助けるのに資格なんて関係ねえよ。 例えお前にどんな罪があろうとも誰かを助けちゃいけない理由になんてならねえ」 「…」 「お前は一生を懸けてその罪を償っていくんだ。 そしてその罪から目を逸らしちゃいけないと俺は思う。 俺の言ってることはお前にとって残酷なことだっていうことは分かってる。 でも罪から逃げないためにも自分が犠牲にしたもの、そして守ったものをきちんと正面から見据えろ。 一人でお前がやったことを背負えとは言わない、俺も実験を止めた責任は果たすつもりだ。 だからお前に支えが必要になった時は、俺も一緒に背負ってやるから」 目の前の少年が何を言っているか一方通行は理解できない。 何故この少年が自分の罪を一緒に背負う必要がある? でも目の前の少年からは自分が今まで散々見てきた打算や策略めいたものは感じない。 それはあの少女が自分に向けてくれた笑顔と同じ害意のない、何処か心を落ち着かせる表情だった。 そして少年は一方通行に向かって左手を差し出す。 自分がその手を掴んでいいかは分からない。 でもそこには自分が本当に欲しかったもの、無敵なんて力ではない何かが詰まっている気がした。 一方通行の他者との関わり合いに反射は既に必要なくなっていた。 一方通行は上条に並んで芳川が乗ってきた車に詰まれた培養器の中にいる打ち止めを見つめていた。 意識が戻ったのか打ち止めは上条と一方通行を見ると二人に微笑みかける。 そして上条の横には美琴が並んで立っていた。 「…オリジナル」 「…なに?」 「今更謝って済む問題じゃねェことは分かってる。 だが、本当にすまなかっ…」 しかし一方通行が謝罪の言葉を口にする前に美琴がそれを遮った。 「謝る相手が違うでしょ。 そして本当に私達が謝らなきゃいけない相手はもうこの世界にいない」 「…」 「私達の罪はそれこそ一生を以って償っても許されないものだと思う。 でも私は自分の罪から逃げることはしない、罪を背負って生きていく。 だからアンタも謝って楽になろうなんて考えてるんじゃないわよ」 美琴は隣に立つ上条の手を握りながら己の罪から逃げないことを、もう一人の加害者に向かって宣言する。 その表情には自信の罪に対する後悔、そして一方通行への複雑な感情など様々なものが蠢いていた。 そしてそんな美琴の横顔を見ながら上条は美琴のこれからを支えることを改めて誓う。 それと同様に上条はもう一人の罪を背負った少年の横顔を眺める。 言葉を発しない一方通行の表情から感情を読み取ることは出来なかった。 ただ何か一方通行の中で変わったことことだけは感じ取れる。 それが一方通行が元々持ち合わせていたものなのか、新しく一方通行の中に芽生えたものなのかは分からない。 しかし一方通行が同じ過ちを二度と繰り返さないことだけは理解出来た。 二人が真の意味で和解することはないと上条は思う。 それでも二人が見据える未来が同じ方向に向かっていることを上条は願うのだった。 そして長かった夏休みが明け二学期が始まる。 しかし二学期の初日から上条たちを待っていたのは、とんでもない大事件なのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者 第4章 ①大覇星祭開幕 学校の数が尋常ではない学園都市はそれに比例して校長の数も多くなっていく。 そうすると大覇星祭といった合同行事がある場合、いわゆる校長先生のお話の尺がとんでもないことになっていた。 やたらとお話好きの校長が多いため、大覇星祭の開会式はある種の地獄の様を呈していた。 地獄のような開会式を終え、上条は恋人である美琴との集合場所に向かった。 集合場所といっても上条のクラスは初日の第一種目からスタートだったため、 二人が約束した場所は上条のクラスが参加する種目の会場である。 会場に向かうと美琴が先に待っていた。 「美琴、熱中症とかになってないか?」 上条はあの開会式を終え、恋人である美琴が体調に異変を起こしてないか心配するように尋ねる。 「私は平気。 当麻こそ大丈夫だった?」 「ああ、心配してくれてサンキューな」 「うん」// 頭に右手を置いてお礼を言う上条に、美琴は照れながら返事をする。 何となく子供扱いされているようだが、美琴は上条の右手で頭を撫でられるのが大好きだった。 自分を救ってくれた右手に触れられていると心がとても安らぐのだ。 見ている周りが熱中症になりそうな雰囲気を放ちながら、二人は炎天下であるにも拘らず手を繋いで歩き始める。 「でも当麻と同じ赤組で良かった。 これなら堂々と当麻のことを応援できるもん」 上条と美琴の頭には同じ赤色のはちまきが巻かれている。 大覇星祭はとにかく参加する学校の数が多い。 そして学校対学校、赤組対白組、二つのトータルを加算して最終的に学校の順位が決められる。 基本的に学校が違う場合はライバルということになるのだが、それでも同じ組の場合は仲間意識のようなものが生まれる。 中には同じ組で協力し合う合同の競技もあったりする。 美琴は上条とこういった競技に出たがったが、上条は身の危険を感知して辞退していた。 男の嫉妬は見苦しいと共に意外と怖いものなのだ。 そう思いつつも恋人と日中から堂々といちゃいちゃする辺りが上条らしいのだが… そして男の嫉妬がこの第一種目で上条に降りかかることになる。 上条のクラスの対戦校はいわゆるエリート校と呼ばれる学校だった。 そしてエリートというのは変なところでプライドが高いものである。 無名の底辺校のあまりパッとしない男子が可愛い女の子、 それもレベル5の第三位である超電磁砲と仲良くしてれば面白くないことこの上ない。 「じゃあ当麻、頑張ってね!!」 「相手はエリート校だからあまり期待されてもな…」 自分が格下だと自覚はあるらしい。 「大丈夫、当麻だったら○○高校になんて負けないわよ!!」 美琴のその一言がエリート達の闘志に火を点けた。 (目の前で彼氏をボコボコにして、その幻想をぶち殺す!!) そうして上条は自身の預かり知らぬところで、エリート達の恨みを買うことになるのだった。 「…なあ、カミやん。 相手のチームの男子、とんでもない目付きでカミやんのこと睨みつけてるんやけど」 「…言うな、青ピ。 俺も妙な殺気をヒシヒシと感じてる」 上条はあまりの殺気に不幸な予感しかしていなかった。 別に彼らに恨みを買うことをした覚えは上条にはない。 いわゆるリア充への逆恨みという奴なのだが、上条がそのことを知る由もなかった。 「しかしこれは却ってチャンスなんだにゃー」 「そうね、これで相手に付け入る隙が出来たわ」 しかしそんな状況を僥倖だと言わんばかりに土御門と吹寄は周りの人間を集めて作戦会議を始める。 上条は悪寒を感じながらも自軍の作戦会議に加わる。 どうやら敵は敵のチームだけではないようだ。 上条が参加するのは棒倒し。 自軍の陣地内に長さ7mほどの棒を一本立て、自軍の棒を守りながら敵軍の棒を倒すというスタンダードなものだ。 しかしそこに火の玉や念動力の槍が飛んでくるという点が通常の棒倒しと大きく異なる。 そして上条の所属するチームにとっては必勝の、上条にとっては悪夢の作戦が実行されようとしていた。 競技開始のホイッスルが鳴り響く。 そしてホイッスルの音と共に上条は自軍に向かって左手の方向に一人で飛び出す。 それは明らかな陽動なのだが、陽動にしてもお粗末過ぎる。 ある程度の人数で動かなければ、陽動に釣られる馬鹿はいない。 しかし自分達から見れば学力でも能力でも足元に及ばない底辺校が相手だ。 これで陽動になると勘違いしてるのかもしれない。 それに加えて陽動に動いたのはあの忌々しいリア充だった。 見せしめに血祭りにあげるのも悪くない。 走り続ける上条に能力による攻撃の嵐が降り注ぐ。 上条を包み込むように激しい砂埃が巻き起こり、上条の姿は一時的に見えなくなる。 砂埃が消え去る頃には落ちこぼれが一人地面に伏しているはずだった。 あまりに一方的な攻撃に会場は静まり返る。 対戦校にも少しやり過ぎたことを後悔する空気が漂い始める中、砂埃の中から一つの影が飛び出した。 飛び出した影の正体は上条だった。 服は所々汚れが目立っているものの、特に大きな外傷がある様子はない。 そして自軍に一人で向かってくる上条の放つ迫力に相手チームは思わず上条を迎撃しようと陣営を崩してしまう。 本来なら一人で突っ込んできたところで相手になるはずがない。 しかし能力を喰らってもまるで堪えた様子がない上条に相手チームは冷静な判断を失っていた。 そして崩れた陣営の一角に上条の所属するチームが一気に雪崩れ込んだ。 結果として勝敗は上条のチームの圧勝だった。 そして勝負の決着がついた後もちょっとした騒動があった。 競技が終わって上条のクラスが競技場から退場しようとした時、上条の身を心配した美琴が上条のところに駆け寄ってきた。 上条にあの陽動作戦を強いた土御門と吹寄は少し罰が悪そうな顔をするが、美琴の目には上条しか写っていない。 「当麻、大丈夫? 何処も怪我なんてしてないよね?」 「ああ、全然平気だ。 美琴に頑張ってって言われたからな、言われた通りちゃんと勝ったぞ」 「ゴメンね、私が無理を言ったせいで…」 「いやいや、上条さんも美琴に少しでも格好いいところが見せられて満足ですよ」 美琴は上条の無事を確認するように上条を抱きしめる。 そして上条も美琴のことを抱きしめ返すのだった。 いつもならクラスメイトからの嫉妬の嵐に晒されるところだが、今の競技で勝利を収められたのは上条のお陰だったので、 二人の邪魔をしようという野暮な人間は上条のクラスメイトにはいなかった。 しかし野暮な人間がいないのはクラスメイトの中の話だけである。 今の劇的勝利の立役者である上条にインタビューしようとしていた学園都市内のテレビ局のカメラに 二人が抱き合う姿がしっかりと収められてしまっていた。 そして姿はライブ映像で学園都市中のスクリーンに映し出されることになった。 その映像を見て常盤台の一人の生徒がその場で気絶したのは割愛。 学園都市に反逆しようとしているカップルは学園都市で一番有名なカップルになってしまった。 その後は大変だった。 何処に行くにも二人が一緒に行動する限り、常に後ろ指を指されるようになってしまった。 上条は騒ぎが落ち着くまで別々に行動することを提案したが、別に疚しいことをしていないと美琴が却下した。 その後も美琴が参加した借り物競争のお題が上条にちょうど当てはまるもので二人一緒に学園都市を駆け抜けたり、 借り物競争が終わった後に配られたドリンクを二人で間接キスの要領で分け合ったりと、 何故か上条と美琴のカップルを強調するような出来事ばかりが起こるのであった。 しかし今の上条にとって初めて迎える大覇星祭は恋人である美琴と共に過ごす思い出深いものになるのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者